市民からアスリートまでのスポーツ栄養学
岡村 浩嗣
試合中、競技中の飲食シーンを見るようになったのはいつの頃からだろう。
マラソン中継では補給水・補給食の場面があったり、つい先日の北京オリンピックではカーリングの「もぐもぐタイム」が話題になったりしていました。
それだけスポーツにとって栄養補給が重要ということが研究されてきたからでしょう。今やスポーツを行う者にとって、栄養管理は必須のものとなりました。
この本は基本的な栄養学にとどまらず、スポーツをする者にとっての栄養成分別、スポーツの種類別など細かく分けて詳しく説明されている教科書的な一冊です。目的によって必要な栄養の摂り方も変わってきますし、専門性をもって指導するためにはスポーツひとくくりで栄養素や食事内容を提案するのではなく、「あなたにとって」必要な「食べ方」を説明することになり、そのための一助となる本です。
「科学的な視点、根拠に基づいて」というところが、この本のとても重要なところで、データや研究結果なども掲載されているため、スポーツ栄養学を知るためにまずは読んでおきたいです。
(山口 玲奈)
出版元:八千代出版
(掲載日:2022-02-24)
タグ:スポーツ栄養
カテゴリ スポーツ栄養
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スポーツする人の栄養・食事学
樋口 満
あまり勉強してこなかった疎い分野だったので、新しく知ることが多かった。普段のご飯の食べ方、スポーツドリンクの取り方や、1日のエネルギー摂取量の求め方など、網羅的な情報が一冊にまとまっていて助かる。
・必須アミノ酸のうち、牛肉やサケ、牛乳に多く含まれるロイシンに、バリン、イソロイシンを加えた3つは「分岐鎖アミノ酸(BCAA:Branched Chain Amino Acids)」と呼ばれ、筋肉づくりにとても重要な役割をしている。
・牛乳に含まれる約3.3%のたんぱく質の80%がカゼイン、残りの20%がホエイ(乳清)で、いずれも筋たんぱく質の原材料になる。このホエイには分岐鎖アミノ酸が多く含まれていて吸収もスムーズなことから、練習や試合の後にできるだけ早く牛乳を飲むと筋肉の回復を促してくれる。
・大豆イソフラボンは、大豆胚芽に多く含まれているフラボノイド(色素成分)の一種で、閉経によって激減する女性ホルモンのエストロゲンに似た作用をもち、骨量の減少を抑える働きがある。大豆イソフラボンがもっとも多く含まれる食品はきな粉、ついで豆腐、納豆、煮大豆、味噌、油揚げ、豆乳などがある。
・必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸は共通して心疾患のリスクを低下させるだけでなく、オメガ3は脳の発育にも重要な役割をはたし、認知症の症状改善の期待が高まっている。オメガ3脂肪酸は植物性油、クルミ(α-リノレン酸)、青魚のDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などが含まれ、中性脂肪値を低下させる作用がある。オメガ6脂肪酸(116系脂肪酸)には、植物油やマヨネーズに多く含まれるリノール酸、肉、魚、卵、肝油などに含まれるアラキドン酸、月見草油など特殊な植物油に含まれるγ-リノレン酸などがある。
・国際オリンピック委員会のサプリメントに関する合意声明で、効果が認められているのは「カフェイン」「クレアチン」「硝酸塩」の3つ、カフェインをもっとも含む飲料は、玉露(日本茶)のほか、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶など。クレアチンは、クレアチンリン酸として骨格筋に存在し、瞬発力を高める働きをする。硝酸塩はNO(一酸化窒素)の生成を促し、骨格筋への血流量増大などが見込める。
やせ・月経異常・貧血・骨粗鬆症など、女性特有の問題や、ジュニア、ミドル、シニア世代特有の問題と対処法についても触れられ、競技種目別にもページが割かれている。ほかに、過度な運動のデメリット、たとえば免疫機能が低下し、風邪をひきやすくなる(オリンピックの大会中のアスリートでもっとも多い訴えらしい)、酸化ストレス(活性酸素)によって細胞の働きが低下することで、疲労感につながることなどは興味深かった。スポーツも栄養も「過ぎたるは及ばざるが如し」ということだろうか。
以下の内容がとくに面白いと思った。
・ヨーロッパのサッカー選手を対象に、糖質の摂取量の違いが試合での動きにどのような影響を及ぼしたかを調査した報告(Kirkendall DT, 1993)。試合前に糖質をしっかりとって筋グリコーゲンレベルが高い選手と、糖質をあまりとらずに筋グリコーゲンレベルが低い選手の1試合での移動距離を比較したところ、前者が12km、後者が9.6kmと2.4kmの差が出た。試合中の動き方も、前者の場合、走っている(ジョギング&スプリント)割合が8割、歩いている制合が2割に対して、後者の場合は、双方の割合がほぼ同じという結果が得られた。
栄養素がパフォーマンスに大きく関わっていることが見てとれる。
(塩﨑 由規)
出版元:集英社
(掲載日:2022-05-16)
タグ:スポーツ栄養 食事
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