知能の謎 認知発達ロボティクスの挑戦
けいはんな社会的知能発生学研究会
「人間らしさとは何か」
「自己と他者の境界はどこか」
「『私』が『私』であるとはどういうことか」
このことについて、自分の考えを論じられる人はどのくらいいるのだろうか。私のように思索などとは無縁の者は、考えることすらままならず、そういうのは哲学者や文学者にお任せ…と諦めてしまう。
本書は人工知能の話で、ロボットの開発者がこういう哲学的な問題に正面から取り組んでいるというところが面白い。人工知能やロボットの開発といっても、人間そっくりのロボットをつくりたいという正統派から、人間理解の手段として人間の本質を再現するようなロボットをつくって動かしてみるという人まで、いろいろなアプローチがあるのだが、とにかく「人間らしいロボット」をつくるためには、まず「人間らしいとはどういうことか」について議論しなければならない。言われてみればもっともである。
以前、地域スポーツクラブの立ち上げをお手伝いしたとき、会員管理システムが必要だということになった。でも、パッケージものではこちらの要望に合うものがなさそうだし、それをカスタムしてもらうとなるととんでもない金額になる。そんなとき、知り合いのSEがボランティアでプログラムを組んであげると言ってくれたので、渡りに船とばかりにお願いすることにした。クラブの負担はサーバーやクライアントなどのハードウェア代だけ。関係者は「いやはや、これぞまさしく地域総合型だねぇ」などと調子に乗って好き勝手に要望したら、SEさんから「そんなの無理」と一蹴されてしまった。結局、ルーチンワーク中心の事務システムに落ち着いたのだが、どうやら、我々が普段何気なく判断している「◯◯のときは□□、だけど◯△になったら□×、さらに△◯となったら××」ということをコンピューターにやらせるのは、大変なことのようだ。
人間の事務を肩代わりさせる道具としてのシステムでさえこうなのだから、人間らしい人工知能となるとそれはもうものすごく大変なのだろうということは素人なりに想像できる。近い将来、人間そっくりなロボットが出現するのだろうか。楽しみなような、怖いような…。
(尾原 陽介)
出版元:講談社
(掲載日:2013-05-27)
タグ:ロボット
カテゴリ その他
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