「ユマニチュード」という革命 なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか
イヴ・ジネスト ロゼット・マレスコッティ 本田 美和子
ユマニチュードとは人間らしさを意味する言葉であり、ユマニチュードと名づけられたケア技法は、徹頭徹尾、目の前の人間の存在を認め、尊重するということを大切にする。
慣習として行われてきたケアの方法は、医学の権力によって、患者の主体性をないがしろにしてきた。ひとを救う(あるいは介助、またはケア、キュアなど)という名目のもと、そのひと自身の気持ちを無視してきた、と。その反発として認知症高齢者が暴れたり、叫んだり、言うことを聞いてくれなかったりするのだという。背景として、無意識の宗教的価値観が関わっているという考察が面白い。
おもに西洋の修道院で行われてきた、他者への奉仕は、辛く苦しい、単調で退屈な仕事だった。しかし、だからこそ自分の救済への道がひらける。苦なくば、楽はなし。no pain, no gainということになる。その意味ならば、悲劇のヒロインに付き合わされて、いい迷惑だ、という構図なのかもしれない。
だけれどケアは本来、する側も、される側も心地よく、楽しいものだというのが著者2人の主張。ひとの目を見て、手を触れ、言葉を交わし、できるだけ立位で、動かせる部分は動かしてもらう。決してどちらか一方通行ではない、依存ではない自立は、交換つまりコミュニケーションから始まる。
人間関係抜きの技術論では、容易にひとはモノ化される。そこから悲劇は起きてきたと、革命家たちが獅子吼する。
(塩﨑 由規)
出版元:誠文堂新光社
(掲載日:2022-07-04)
タグ:ユマニチュード ケア
カテゴリ 人生
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