身体のデザインに合わせた自然な呼吸法 アレクサンダー・テクニークで息を調律する
リチャード・ブレナン 稲葉 俊郎
人は呼吸することなしで生きていくことはできません。それにもかかわらず仕事や食事など生活上の行為に比べると深く考える人はいません。なぜならばなんの努力も苦労もなしにできるのが呼吸だからです。
誰もがあまり意識することのない呼吸のメカニズムは複雑で繊細です。人は困難なことには注意を払いますが、当たり前のことにはさほど思考を働かせません。それゆえに知らず知らずのうちに適切な呼吸ができなくなっていても気づく人はいません。好ましくない呼吸法がいつしか身体の能力を低下せしめたり、何らかの身体的な不具合が現れたときに気づくのかもしれません。場合によっては病的な状況に陥っても、その原因が呼吸にあることに気づかないケースもあるようです。
本書はアレクサンダーテクニークの考えから、その中核を担う呼吸法に言及したものです。知っているようで意外と知らない呼吸のメカニズム。前半は呼吸と発生についての基礎知識。改めて解説されると複雑であることがわかります。それを知ったうえで呼吸の問題点を探れば具体的な矯正ポイントが明確になります。
本書の中心的な問題は、あまり呼吸について意識しないのは、各々が自らの呼吸に対し漠然とした感覚による評価だけだからであるという指摘があります。さらにその感覚的評価というものがあまり正確ではなく誤りの多いものだと主張します。考えてみれば病気のときでも初期の段階では身体の異変にあまり気づくことがなく、痛みや発熱などの具体的な症状があらわれて初めて異変に気付くものです。そう考えれば筆者の考えは納得がいきます。
実際に本書が推奨する呼吸法自体はまさしく「身体のデザインに合わせた自然な呼吸法」であり特殊なものではありません。しかしながら身体の誤った使い方が習慣化することで自然な呼吸法ができなくなっているという点が主旨であるといえそうです。そして身体の使い方の誤りをなくせば、勝手に自然な呼吸法になるということのようです。
この本は同じ筆者の『アレクサンダー・テクニーク完全読本』をお読みになった後に読んでいただいたほうが筆者の言いたいことがよくわかるだろうと思います。私は以前に「完全読本」を読んでいたので下地がありわかりやすかったのですが、もし読んでいなければ、大事な根底部分がボケてしまっていたかもしれません。
(辻田 浩志)
出版元:医道の日本社
(掲載日:2019-08-30)
タグ:アレクサンダーテクニーク
カテゴリ ボディーワーク
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