ザ・スコアラー
三井 康浩
この書籍の著者は、読売巨人軍のスコアラーとして40年間務められた三井氏です。どのように試合からデータを収集し、そこから選手に言語化してどのように伝えるかというスコアラーの経験をまとめた一冊です。
序章では、あの伝説として謳われる09年WBC決勝の韓国戦にてイチロー選手が放ったセンター前ヒットの逸話から始まります。
第1章では、スコアラーになる経緯やそのときのエピソードが中心です。第2章では、スコアラーから見たバッターの特性。第3章では、スコアラーから見たバッテリーの特性を知ることができます。第4章では、スコアラーの視点から編成部や外国人スカウトの手法を知ることができます。
著者がスコアラーとして動き出したのは1980年代中盤です。今の時代でこそ、ITソリューションが発達して映像やデータのやりとりが活発に行われます。しかし、当時はビデオカメラが主流です。逆を言えば、昔の方がデータの収集が大変だったはずです。現代と過去の違いにも著者は隔世の感があると述べています。昔を思えば莫大なデータの扱いの大変さは容易に想像がつきます。
昔は予告先発がなかった時代で、誰が先発か、またバッターが待っている球種は何かをスコアラーが呼んでいました。相手先発バッテリーの配球から傾向を読んだりと、アナログにデータを集めていた苦労を感じ取ることができます。
ちなみに本稿の著者は島根県の出身です。私も島根県出身ですが、この書籍を手に取るまで存じ上げませんでした。同じ県の出身者で、野球界に寄与した方で大変嬉しくなりました。山陰にちなんで裏方で活躍されたのは納得です。
野球の真髄を別角度から感じ取ることができ、プロ野球を何倍にも楽しむことができるお勧めの書籍です。
(中地 圭太)
出版元:KADOKAWA
(掲載日:2021-12-02)
タグ:スコアラー データ
カテゴリ その他
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