スポーツ戦略論 スポーツにおける戦略の多面的な理解の試み
上田 滋夢 堀野 博幸 松山 博明
スポーツにおいて、「戦略」という言葉が使われるのはどういう場合だろうか。一つの試合に勝つため、1点を挙げるための方策をそう呼ぶことがあれば(しばしば、この点では戦術との混同が起きる)、長期的なチームづくりのプランをそう呼ぶこともある。プロのチームであればマーケティングの戦略は必須であるだろうし、現代はスタジアムの建設や再開発と結びついた「スポーツとまちづくり」といった戦略も叫ばれる時代になってきた。
本書では、スポーツにおける「戦略」の枠組みを明確にすることを目的に、16名の執筆者がさまざまな角度から論じている。ひとつの挑戦的な取り組みと言えるだろう。本書の面白さは、各執筆者のバックグラウンドや活動の領域が多岐にわたっているところである。そのため、同じ「スポーツ戦略」というキーワードのもとで論じてはいるが、全体として、スポーツの非常に幅広い領域をカバーしている。
全部で5章、18講で構成され、歴史を紐解きながら戦略という概念を整理する講があれば、マーケティングの観点からリーグ機構の戦略を論じる講がある。また実際の大学サッカーチームを例に学生アスリートの組織構築の戦略を紹介する講があれば、柔道が戦後のスポーツ化の中で採用してきた戦略を紹介する講があるといった具合である。
こうした構成であるため、読者は章題を見て、自分の興味のあるところから読み始めることができる。「スポーツ戦略」というキーワードをまず俯瞰的に眺めるための一歩目となりえる一冊であろう。
(橘 肇)
出版元:大修館書店
(掲載日:2019-09-18)
タグ:戦略
カテゴリ その他
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