スポーツのケガ+疲れ これだけで防げる、治せる
中嶋 寛之
関東労災病院スポーツ整形外科部長としてつとに著名な中島寛之氏がまとめた書。長くスポーツ医療に携わってきた経験と実績をもとに、スポーツマンのために、現場ですぐにでも活かせるように書かれている。「スポーツ整形外科」が誕生したとき、どうしてこれまでなかったのかという声も聞かれたが、本書に関しても同様、どうしてこういったわかりやすく適切にまとめられた、いわば現場でのスポーツ医学書がなかったのだろうかと思わざるを得ない。どのチームにも、またスポーツを行うどの家庭にも必要な書である。
全体は大きく次の3つに分かれている。
「スポーツのケガ あとで泣かない最新応急処置」
RICEから始め、筋肉と骨についての最低必要な知識と、よくある9つのケガの手当てと治療、リハビリテーション、テーピングなどに関する章。
「ケガを防ぎ疲れをとるストレッチング&スポーツマッサージ」
ストレッチングとスポーツマッサージの基本をわかりやすく説いた章。種目別プログラムもある。
「スポーツ別ケガと傷害の予防のポイント」
各スポーツで起きやすいケガと障害についてポイントを簡潔にまとめた章。
読者にとって嬉しいのは、各章がスポーツマンの立場で書かれていることである。特に「よくある9つのケガの手当て」の項では、症状、応急手当て、リハビリテーションと再発予防など、スポーツマンがもっとも気になるポイントが述べられている。こういった書で適切な判断と処置を学ぶことで、十分力を出すことができるのである。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:主婦の友社
(掲載日:1982-08-10)
タグ:スポーツ傷害
カテゴリ スポーツ医学
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スポーツ外傷カラーアトラス
J.G.P.Williams 中嶋 寛之
スポーツ医学全般に対し、現場、すなわち監督、コーチ、トレーナー、選手をはじめ一般人における関心は以前に比してはるかに高まっている。ケガは即座に戦力の低下につながるだけでなく、最悪の場合、そのスポーツへの復帰も望めない。さらには日常生活への支障も生む。常に向上を目指し極限まで体を酷使する競技スポーツ、また健康を求め、楽しみも含む一般人のスポーツにおいても、スポーツ医学の基礎知識なくして、プレーもコーチもできなくなってきたのである。それはまた当然のことである。
だが、私たちは病院に通うような、あるいは入院するようなものに関しては、とかく医師に任せきりになりがちである。しかし治すのは医師だけの力ではできない。その本人が治そうと思い、自分の障害を把握し努力しなければならない。その意味で、本書は専門的であるとはいえ、スポーツ外傷に関する貴重な写真と解説に満ちたもので、全般的に短時間で見通せる優れたアトラスである。訳者である中嶋氏も序文で「とくに実際にレントゲン写真、手術所見など見ることの少ないパラメディカルの方々、トレーナー、体育学生などには理解しがたい点もあるかもしれないが、逆にいえば貴重な財産となることであろう。/スポーツ整形外科を専門とする方はもとより、スポーツ選手と接触することの多い上記の方々に是非おすすめしたい本である」と記している。
500点を超えるカラー写真、レントゲン写真、図版によるスポーツ外傷の目で見るテキストとでもいうべき本書は、著者序文によれば「イギリスあるいは海外におけるスポーツ外傷研修コースの講義に用いられたものが中心となっている」。多少値は張るが、用意しておきたい1冊である。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:南江堂
(掲載日:1982-10-10)
タグ:スポーツ傷害
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツ障害 発育期を中心に
高沢 晴夫 中嶋 寛之 秋本 毅
『小児のメディカル・ケア・シリーズ』の1冊。共著者である三氏は本誌(月刊トレーニング・ジャーナル)で何度もご登場いただいているので改めて紹介するまでもないだろう。
「発育期のスポーツ障害を理解するには、発育期のからだの特徴を知らなければなりません。骨、関節には特に発育期特有なものがあります。(中略)発育期のスポーツは全身的な発育・発達を促すようなものが理想的です。目先の勝負にとらわれて無理をしないよう注意すべきであり、将来に目を向けて指導することが根本的な目的と思われます」(はじめにより)
本書は上の観点より書かれたものであり、大きく以下の5つの章に分けられている。
第1章「発育期のスポーツ障害の特徴」、第2章「発育期によくみられる障害」、第3章「発育機におけるスポーツに特有な骨折」、第4章「スポーツ外傷、障害の救急(応急)処置」、第5章「発育期スポーツ障害の予防」
子どもが大人のミニチュアでないことは本誌でも何度か述べてきたことだが、「エリート教育」とか「スパルタ教育」として、子どもに小さいうちから、野球、ゴルフ、テニスを学ばさせている例は少なくない。小さいうちから多くのスポーツの基本動作を学ぶのはよいことだが、使いすぎ症候群(overuse syndrome)をきたすまで「特訓」や「ハード・トレーニング」を積むのは親のエゴであり、指導者の無知であろう。本書のような指針というべき書を子どものスポーツ指導・管理に当たる人にはぜひとも読んでいただきたい。三氏とも整形外科医であり、できるだけ平明に書かれた内容は、専門的とはいえ十分一般の理解の範囲内にあるといえる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:医歯薬出版
(掲載日:1983-06-10)
タグ:スポーツ障害 発育発達
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツ外傷と障害
中嶋 寛之
今さら紹介するまでもない、本誌ではお馴染みの中嶋寛之氏による編著の書。まず全体の構成と執筆者を挙げよう。
I. スポーツ医学序論(黒田善雄)
II. 運動生理学(石河利寛)
III. 部位別外傷と障害
1. 頭部(馬杉則彦)
2. 脊柱(頸部)(有馬亨)
3. 脊柱(腰部)(有馬亨)
4. 骨盤(中嶋寛之)
5. 大腿(中嶋寛之)
6. 膝(中嶋寛之)
7. 下腿・アキレス腱(横江清司)
8. 足(横江清司)
9. 足関節(横江清司)
10. 肩・鎖骨(萬納寺毅智)
11. 上腕(萬納寺毅智)
12. 肘関節(萬納寺毅智)
13. 前腕(萬納寺毅智)
14. 手・手関節(山内裕雄、井上久)
15. 顔面(眼・鼻・耳)(大畠襄)
IV. スポーツ別外傷と障害
1. ランニング障害(横江清司)
2. 水泳障害(武藤芳照)
3. 野球障害(渡会公治)
4. サッカー障害(星川吉光)
5. テニス肘(渡会公治)
6. スキー外傷(藤巻悦夫)
7. ラグビー外傷(増島篤)
V. 年齢・性別による障害
1. 年齢による障害(高沢晴夫)
2. 女性とスポーツ(中嶋寛之)
VI. スポーツ外傷・障害の予防(黄川昭雄)
VII. スポーツに関するテーピングの実際(その例)(山本郁榮)
VIII. アスレチック・リハビリテーション(鹿倉二郎)
IX. スポーツ・マッサージ(村井貞夫)
X. スポーツと応急処置(近藤稔)
上記から分かる通り、スポーツ外傷・障害をスポーツ整形外科の範疇に限らず、運動生理学やマッサージ、テーピングなどについてもわかりやすく、しかも専門的に編集されている。写真・図も多い。
執筆陣、頁数とも充実したこの大著は医師のみならず、指導者やトレーナー的立場の人など広く読まれるべきだろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:文光堂
(掲載日:1984-01-10)
タグ:スポーツ医学 外傷 障害
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツ医学の立場からみた小学校の体育 100年耐用性のある運動器を育てるために
中嶋 寛之
タイトルの通り、本書は小学校で行われている体育をスポーツ医学という専門的な切り口からどうあるべきなのかを考察した内容となっております。そしてサブタイトルが「100年耐用性のある運動器を育てるために」とありますが、これこそが本書の裏テーマと申し上げていいでしょう。小学生と100歳を超える高齢者という時間軸においてもかけ離れた世代のつながりこそが、これからの時代を生きる我々が抱えるであろう重要な問題点であり、その問題点を解決すべきもっとも重要な時期が小学生の時代であるという指摘がなされています。
そう遠くない将来、平均寿命が100歳を超えると言われていますが、長寿という喜ばしいことである反面、100歳を超えたときの運動器がどのような状態であるかという切実な不安が浮かんできます。近年サルコペニア(筋肉減少症)やロコモティブシンドローム(運動機能障害による移動機能の低下)という問題が話題になっています。これらの中心的問題は、高齢者の運動能力の低下にあります。本書は高齢者固有の問題として捉えるのではなく、小学生の体育に問題解決の糸口を求めています。
高齢者が運動習慣を身につけることにより体力低下を少しでも防ぐという解決法も重要ではありますが、人生において身体能力を高められるのは成長期であり、その時期に「運動嫌い」や「体育嫌い」をなくすような体育授業をするという提案がなされています。一つ一つ理屈を考えてみれば小学校のおける体育教育の重要性は理解できるわけですが、現実問題として児童それぞれの運動能力の個人差はあり、苦手だから運動そのものが嫌いになるのは自然なこと。もっとも身体を動かすはずの小中学生のころに嫌いになった運動を大人になってやりたくなるというのは考えづらく、そのままの流れで大人になり高齢者になり100歳を超えたとしたら、その人たちの運動能力が快適な生活を実現させるに足りうるレベルを維持できるかを考えればかなり不安になってきます。
「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、これから大きく成長しようとする子供時代に運動の必要性を理解してもらい、運動が楽しいものだと子供が感じられる体育教育をつくり出すことこそが100歳時代に必要なことだと説きます。
高齢になり運動能力が低下したり痛みを抱える中で運動をするのには、困難が付きまといます。むしろリスクを抑える対策は早いに越したことはありません。「体を育てる」と書いて「体育」というのは50年前も今も同じです。しかしながら平均寿命が70歳代から80歳代を超え、いずれは100歳を超えようとしている日本の将来。「体育」の重要性はさらに高まりそうです。これは私たち一人一人が将来直面する可能性のある問題であることを忘れてはいけません。
(辻田 浩志)
出版元:ナップ
(掲載日:2021-09-22)
タグ:体育 ロコモティブシンドローム
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツ医学の立場からみた小学校の体育 100年耐用性のある運動器を育てるために
中嶋 寛之
スポーツ整形外科のドクターとしてオリンピックの日本選手団本部やチームに帯同してきた中嶋氏。21世紀以降の超高齢社会において、中高年への運動指導は行われ始めているが、小学校の体育の時間をもっと活用すべきではないかと指摘する。東京オリンピック代表選手を追跡して筋・骨の持ち越し効果があるとわかったのはもちろん、運動器の疾患に苦しむ人を多く見てきた著者だからこそ、ベースとなる子ども時代が重要だというのは説得力がある。とはいえ専門的なことをしようというのではなく、まずは身体を動かすことを楽しみ、スポーツを好きになってもらおうという視点にハッとする。運動のしなさ過ぎはよくないが、し過ぎもよくない。そのために小学校の先生への講習にも触れており、次世代への温かな眼差しが感じられる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ナップ
(掲載日:2017-10-10)
タグ:体育 ロコモティブシンドローム
カテゴリ スポーツ医科学
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