健脚商売 競輪学校女子一期生24時
伊勢 華子
2012年に復活した女子競輪。競輪学校1期生と、廃止前に活躍した元選手のうち8名にスポットを当てた。学校部活動などで親しみのある種目ではないのに、なぜこの世界に身を投じたのか。バンクを走ることで何が見えたか。彼女たちが目の前で話しているかのような描写で明らかにしていく。浮かび上がるのは「生活」だ。タイトルに商売とあるからか賞金額から子供時代の小遣いの額までポンポン出てくる。自分の身体だけを頼りに、生きていくために漕ぐ。そこに、女性ならではのタフさだけでなく「夢」も感じられるのが、競輪の、プロスポーツの醍醐味だと改めてわかる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:中央公論新社
(掲載日:2016-08-10)
タグ:競輪
カテゴリ スポーツライティング
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健脚商売 競輪学校女子第一期生24時
伊勢 華子
何人かの(元)女子競輪選手のドキュメンタリー作品です。有名選手のサクセスストーリーとは程遠い一人一人の人間像が描かれています。本書の特徴といえば肝心の競技に関わる部分がとても少なく、女子競輪選手のストーリーというよりもむしろ一人の女性のストーリーが幅広く描かれています。
想像するに競輪の熱心なファンが期待しそうな、勝つための苦労話とか、血のにじむような努力を経て栄冠を勝ち取るというようなスポーツドキュメンタリーにありがちな話はありません。飼っていたウサギが死んでしまったとか、ダンサーになりたかったけどあきらめたなど、肩透かしを食らいそうなほど競輪とは関係のないストーリーが大半を占めます。
叙事的ともいえる淡々とした描写は筆者の作風そのものだと感じましたが、感情的なものをあえて抑えた書き方だからこそ、読者の想像力が掻き立てられ、登場人物の人となりや感情を頭の中で描いてしまいました。感動を強制されるような表現は皆無といっていいでしょう。そんなところに筆者の凄みすら感じてしまいました。
私なりに感じた裏テーマは「挫折」だと思います。夢があり挫折して競輪の世界に入ってきた者もいれば、競輪の世界で挫折した者もいました。人は挫折したからといって死ぬわけではありません。むしろ挫折してからの生き方にこそ意味があるように受け止めました。
正直、華やかな作品とは言えませんが、じっくり読めば多くの人に共感を与える作品だと思いました。
巻末に登場人物の近況が記されていました。80歳を超え競輪とは無縁の生活をされている方もいます。明日の栄冠を夢見て頑張っておられる現役選手もおられます。皆さんの今の生活を知ってすごく救われた気がしました。それだけ皆さんに感情移入して読んでいたのでしょう。
(辻田 浩志)
出版元:中央公論新社
(掲載日:2020-02-20)
タグ:競輪 女性
カテゴリ スポーツライティング
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