質的研究のための現象学入門
佐久川 肇
本書で言う現象学的研究とは、その人だけにしかわからないその人固有の「生」の体験について、できる限りその人自身の意味に沿って解き明かすことをさす。
対人支援のための現象学では、あくまで現象学の一部を援用するのであって、哲学科の学生が現象学を学ぶのとは異なる、と前置きがあり、ホッとする。正直、ハイデガーやフッサール、メルロ=ポンティやレヴィナスの原著はハードルが高すぎる。でも現象学は前から気になっていた。現象学の、事象そのものへ! というスローガンなどからも、肘掛け椅子の画餅の理論とは、対極に位置するような印象を受けてきた。客観から実存へとピボットするのは、より深く現実にコミットしよう、という誠実さを示しているように感じてきた。
現象学ではあらゆる前提を排して、「生」の経験の意味と価値を問う。クールでドライな量的研究の切れ味はないかもしれないけれど、歯切れのわるい人間味や、眼差しの温かさがある。理解が間違っているかもしれないが、そんなふうに感じる。
(塩﨑 由規)
出版元:医学書院
(掲載日:2023-01-17)
タグ:質的研究 現象学
カテゴリ その他
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