「ゼロ成長」幸福論
堀切 和雅
この本は筆者が家を35年ローンで購入したところからスタートする。少し前によく言われていた「勝ち組」「負け組」。筆者の考える負け組とは年収がいくらであろうと、「金の問題で、動ける自由を失った人」だそうだ。何十年ものローンを組んでしまえば仕事も辞めるに辞められない。家のローンを払うために生きることは果たして幸せだろうか。
お金があれば確かに生活は潤うかもしれない。テレビ、ゲーム機、DVDプレイヤー、エアコン、今では我々の生活に欠かせないこれらのモノはなくても私たちは生活できていたのである。しかし私たちはお金を稼いでも新しいモノに変えてしまうのだ。周りの人たちが持っているものを持っていないことに対して、私たちは劣等感を感じてしまう。
お金があって自分の納得のいく仕事ができている人もいるだろう。だがそれはほんの一握りなのである。人よりよい家に住むこと、人よりよい車を買うこと、人よりたくさんお金を稼ぐことだけが成功ではない。もちろんお金があるに越したことはないだろう。だが、低賃金でも自分が納得し、関わった人たちを幸せにできることも1つの成功の形である。本書はそういった脱競争主義をテーマにした作品である。
本書ではさまざまな環境に身を置いている人物の話が描かれており、改めて仕事の意味、価値観や自分にとっての成功は何かを考えさせられる。私たちは何のために働いて賃金を得ているのだろうか。人によってその答えは違うだろう。サラリーマンだけが生きる道ではないことを教えてくれるだろう。こんな不景気な時代だからこそ、自分のあり方を改めて考えてみてはいかがだろうか。
(三嶽 大輔)
出版元:角川書店
(掲載日:2011-10-31)
タグ:経済 成長
カテゴリ 人生
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