B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史
大島 和人
2020年に5 年目を迎えたプロバスケットボールリーグ・Bリーグ。FIBA(世界協会)からペナルティを受ける状況の中、川淵三郎氏が日本協会会長となり、bjリーグとNBLを統一、と報道も多くされた。だが、単純に両リーグを合体させたわけではない。多数の関係者に振り返ってもらい、著者いわく「大河ドラマ」に迫る。 リーグやチーム、日本協会だけでなく、アマチュアの歴史が長いゆえに影響力の大きかった学生連盟や地方協会の動きにも触れている。さまざまな立場・考えの人が登場するが、共通して「日本のバスケットボールの未来」のためにもがいたことがわかる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:日経BP
(掲載日:2021-04-10)
タグ:バスケットボール
カテゴリ その他
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B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史
大島 和人
本書は近年のプロバスケットボールリーグの変遷が書かれたドキュメントです。さほどバスケットボールに詳しくなかった私でもリーグが分裂し、そこからの対立により国際バスケットボール連盟(FIBA)から国際資格停止処分を受けるかもしれないといった問題があったことは記憶にありました。「内紛」「主導権争い」といえばその通りなんですが、本書を読むことでその背景であったりスポーツの在り方の変化、さらには90年代のバブル崩壊が絡んでいることがわかり、単なるお家騒動として片づけられる問題ではなかったことに気づきました。本書で記されるバスケットボールリーグの内紛も、遡ればオリンピックにおけるアマチュアリズムの変化が根底にあるように思えました。今日オリンピックにはプロのアスリートが出場することに違和感を覚えなくなりましたが、80年代まではプロ・アマの論争がありました。日本においても一部のスポーツを除いては企業がクラブ活動みたいな体裁としてチームを保有し、少なくともスポーツそのもので利潤を上げるという形態ではありませんでした。そのころはオリンピックに準じた感じでアマチュアスポーツとしてバスケットボールが当たり前だと思っていましたが、チームを保有する企業がバブル崩壊とともにスポーツに資金を投じる余裕がなくなり雲行きが変わります。
本書ではそこのところの事情はサラッと触れられている程度でしたが、問題の背景は、それまで安泰だったチームがプロスポーツとして利益を上げることで存続する必要が生まれたことだと感じました。NBLとbjリーグが悪者でB.LEAGUEを誕生させた人たちが正しいという単純な図式ではなかったことを踏まえて読めば、これまで企業のクラブチームとして運営してきたNBLと純然たるプロリーグを作ろうとしたbjリーグの資金力の乏しさ、それぞれの問題点のぶつかり合いが本書の紛争を生んだのではないかと考えられそうです。そこにFIBAからの条件付き処分があったことでB.LEAGUEの誕生を加速させたことは間違いなさそうです。
本書ではプロリーグ誕生のロールモデルとして描かれていますが、むしろ今後の運営に注目したいものです。サッカーやバスケットボールやバレーボールなど、スポーツがビジネスとして変革をとげました。これからはどうやって軌道に乗せていくかで未来のスポーツ界が変わるでしょう。
(辻田 浩志)
出版元:日経BP
(掲載日:2023-10-20)
タグ:バスケットボール
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