馬を走らせる
小島 太
競馬がとりわけ好きなわけでもなく、賭け事も好きなわけでもない。競馬はウン十年の人生で1回しかしたことがない(しかも惨敗)。
しかし、なぜか競馬場は数ある“行ってみたい場所”の1つであった。つくり上げられた美しい馬体で走る馬の姿を、青空の下で見てみたかったのだと思う。この本を読んでその気持ちが増したことは言うまでもない。
小島太氏。北海道で生まれ、周囲に馬がいる環境で育ち、騎手として30年、騎手を引退した翌年から調教師という、筋金入りの"ホースマン"である。とにかく馬に対しての愛情に溢れている。ある人に言われた"馬バカ"が最高の褒め言葉だと自ら認めるほどの、馬バカっぷりである。そんな“馬バカ”の目線を通して、どのような過程を経てあの美しい馬体が作られ、競走馬として最高の舞台へ送りだされるのかが書かれており、競馬場に行ったことのない"にわか馬好き"はよりいっそう興味がそそられる。
また、厩舎の経営者として、馬主、調教師、(馬の)生産者、育成者、厩務員、騎手、そして競馬ファンなど、馬を通して関わる全ての人に対する配慮や、最高の状態でレースに出走させるために作りあげていくマネジメント論は、「出走する馬」=「試合に出場する選手」として読み進めていくと、チームスタッフや企業、指導者、父兄など、選手を取り囲む様々な人々に関わることになるトレーナーにとって勉強になることが多い。
(石郷岡 真巳)
出版元:光文社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:競走馬 マネジメント
カテゴリ 指導
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