健康・運動の科学 介護と生活習慣病予防のための運動処方
田口 貞善 小野寺 孝一 山崎 先也 村田 伸 中澤 公孝
生活習慣病や介護、というと中高年の問題というイメージがあるが、その前から自らの健康を考えてもらえるようなアプローチも含んでいる。高齢化が進む社会において、スポーツ科学は教養として知っておくべき分野かもしれない。その点で本書は図表や写真が多用されていて、わかりやすく説得力がある。
また、骨粗鬆症や転倒など、症状ごとの予防対策はもちろん、肥満者や身体に痛みのある人に対して運動を処方する場合の注意点にも多くページを割いている。すでに運動指導の現場で活躍している人にとっても、今後は健康な人ばかりが指導を受けにくるわけではなくなっていくことを考えると、大いに参考になるのではないだろうか。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:講談社
(掲載日:2013-03-10)
タグ:運動処方
カテゴリ スポーツ医科学
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スーパーラガーメンはこうしてつくられた
小野寺 孝
スーパーラガーメンはこうしてつくられた小野寺 孝 部の歴史上最高といわれる猛練習をし、見事日本一に輝いた慶応義塾大学蹴球部(慶応ラグビー部)のフィットネス・コーチが著した書。副題に「慶応ラグビーの強さと栄光の秘密」とある。この種の本はやたら感情移入が強かったり、「見てきたようなニュー・ジャーナリズム」風であったりするのだが、この本は抑制がきき、冷静に、それでいて情熱が伝わる筆致で書かれている。それは、著者が慶応高校から慶応大学を通じてウィングの選手としてプレーしただけでなく、8年間フィットネス・コーチとして、科学性、客観性を持って取り組んできたからであろう。書名通り、慶応ラグビー部がどのような過程で強くなっていったか、フィットネス・コーチの視点で語られている。したがって、ラグビーの指導者にはすぐに役立つ内容が多いのは当然だが、何もラグビーだけにいえることではない、スポーツ・トレーニング全般におけるポイントが浮き彫りにされているため、どのスポーツの人が読んでも参考になる。
というのは、昭和59年度のシーズン、昭和26年以来34年ぶりに関東大学対抗戦グループで全勝優勝したときのフィフティーン中、高校時代に全国大会(花園)を経験した選手は1人もいず、主将松永(天王寺高)、右ウィング若林(小石川高)以外は全員付属校出身。伝統ある名門チームとはいえ、戦力的にはどちらかというと「ごくふつうの選手の集団」だった。大学選手権の歴史をみても、優勝は昭和44年(早稲田と引き分け両者優勝)以降なし(昭和53年は準優勝)で、名門といわれる割には、さほど“栄光”に輝いてはいなかったのだ。しかし、練習の長さ、すごさは名物だった。「弱いところをとにかくたたいてたたいて強くすることしか考えなかった当時の慶応ラグビーのあり方が、見直しを迫られる時期にあったことは確かだろう。当時はまさに、慶応ラグビーという意地だけで支えられていた時代だったのだ」(第2章より)
当時(昭和52年)、「黒黄会報」(OB組織黒黄会機関誌)に上田昭夫前監督が手記を書いた。そこで当時の慶応ラグビーについて5つの欠点を指摘している。
①基礎体力不足
②基礎プレーの甘さ
③気分的にムラが多過ぎる
④体を張った泥臭いプレーが見られない
⑤集中的に行う練習についていけない
思えば、5点とも克服されてしまっているわけだが、「練習によって勝つ」「あれだけの猛練習に比べたら、試合時間の80分は短いものだ」という“美風”に対し、首脳陣がこのままではだめだ、練習方法を改革し、意識を改革し、無敵の戦士をつくらねばという考えを抱き始めたのが昭和52年だったのだ。実際ウェイト・トレーニングがこの年から始められ(著者がコーチ就任)、是永選手という足は速いがひ弱い欠点のあったウィングが、別人のようにたくましくなった。この成果が15シーズンぶりに早稲田に勝ち、大学選手権準優勝につながった。この年度の卒業生は、記念に1組のウェイト・トレーニング用品を残していっている。
著者が「フィットネス・コーチ」になったのは翌年度からである。さらに、その年、ゲスト・コーチとしてオーストラリア協会公認コーチ、クリス・ウォーカーを迎えた。そうしたトレーニングによって、「慶応の全部員に、この『体力的必勝の信念』を芽生えさせていく」ことができたのである。
そこには、ラグビーという競技の特性の科学的分析、体力の具体的目標値(3.2kmを12分台、50m走を6.5秒以内、ベンチ・プレスを100kg3回×3セット。これができないと一軍に入れない)、トレーニング計画、プログラムの緻密さ、そして伝統の意地があった。
フィットネス・コーチである著者は、体育の専門家ではない。しかし、広告代理店の営業部長という職業柄、本場のアメリカン・フットボールの試合をよくみ、ノートルダム大学の練習も目の当たりにしている。さらに、前出クリス・ウォーカーの強い勧めもあって、オーストラリアでのコーチ・セミナーにも参加。こうした経験が、“科学的ラグビー”の大きな力になっていることだろう。誰しも最初は素人である。熱意があれば、現在のスポーツ医科学を現場に活かすことは、誰にでもできるのである(もちろん努力は必要だが)。スポーツ医科学は本来現場で役立つためにある。活用する気になれば、誰にでもできるのだ。
和崎元監督作成のスローガン3本のうちの最後は、「知性ある猛練習で、敵を凌駕せよ」だった。知性ある猛練習、これなくして日本一という高みには達し得ない。このインテリジェンスは、しかし、いうほど高みにはないのだ。そういっては失礼になるかもしれないが、特殊な人しか持ち得ないものではないということなのだ。
筆者は親切にも、“フィットネス・トレーニング”の実際を第13章で詳しく紹介している。また「付章」では「クラブチームのためのフィットネス講座」「高校生のためのフィットネス講座」と題し、具体的プログラムも挙げている。
「日本中のあまり強くないチームの指導者や選手の人たちに『おれたちもやってやろうじゃないか』と思ってもらいたくて、私はこの本を書いた」(あとがきより)
もとより、1つのチームが優勝するのは1人の存在のみによるものではない。監督、コーチ、マネージャー、OB、スポーツドクター、そして選手、全員の力によるものであるのは当然である。しかし、いかにもその全員が気だけ逸(はや)らせても実りはない。どうすればよいか、それが本書にある。
・主な目次
第1部 15人のスーパーラガーメンが新しい慶応ラグビー部を完成させた
第1章 「魂のラグビー」が蘇った
第2章 昭和52年当時の慶応ラグビー
第3章 慶応ラグビーに必要なもの
第4章 相手に勝つラグビーとは
第5章 フィットネストレーニングの登場
第6章 きびしいラグビーをめざす
第7章 上田−松永コンビの誕生
第8章 オーストラリア・ラグビーに学ぶ
第9章 コーチと選手はひとつの輪でつながっている
第10章 59年度のシーズンが始まった
第11章 大学日本一の座を目指して
第2部 ラグビープレーヤーはスーパーマンでなければならない
第12章 なぜ今、スーパーマンが必要か?
第13章 スーパーマンをつくる体力とは
第14章 スーパーマンをつくる体力トレーニング
第15章 スーパーマンにより近づくために
第16章 これであなたもスーパーマンになれる
(清家 輝文)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:1986-05-10)
タグ:ラグビー 慶応義塾大学 トレーニング
カテゴリ 指導
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健康・運動の科学 介護と生活習慣病予防のための運動処方
田口 貞善 小野寺 孝一 山崎 先也 村田 伸 中澤 公孝
サブタイトルにある介護の部分では、我が国が取り組んでいる介護予防の事業についてもわかりやすく詳しく記載されている。私はこの事業にも関わっていたが、運動指導を生業とする方にとっても、今後この事業が身近に感じられる領域であることは間違いないと言っても過言ではないだろう。
また実践的な視点からでは、著者らが研究結果から効果的な運動を紹介されている。私にとっては目新しい運動が数多く、またわかりやすく記載されており、新たな引き出しが増えて勉強になった部分である。
(河田 大輔)
出版元:講談社
(掲載日:2014-04-16)
タグ:運動処方 生活習慣病 健康科学
カテゴリ トレーニング
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