アレクサンダー・テクニーク やりたいことを実現できる〈自分〉になる10のレッスン
小野 ひとみ
心身を整える方法、アレクサンダー・テクニークの入門書である。
フレデリック・マサイアス・アレクサンダーは、オーストラリアの舞台役者で、舞台上で自分の声がかすれたり、出なくなったりしたことをきっかけに、自己観察をはじめた。すると、舞台上ではいつも不自然な姿勢で声を出している(頭を後ろに引いて、首に力が入り、ノドを押し下げている)ことに気づいた。よかれと思ってしていた姿勢によって、苦しんでいたのだ。そのことから、からだの誤用(ミスユース)に至るまでの過程(プロセス)に着目し、いくつかの概念(キーワード)によって「自分自身の使い方」を整理していく。
・プライマリー・コントロール
動き出しにはまず頭が動く。これは意識(マインド)・からだ(ボディ)、双方の意味において。これをヘッド・リードという。動きで言えば、幼児の対称性・非対称性緊張性頸反射を思い浮かべるとわかりやすい。はじめに頭が動く・働くことが、からだ全体の動きの「スイッチ」のような役割を果たして、より自然な動きにつながる。
個人的な経験だが、友達とスキーに行ったときに、「行きたい方向に目を向ける」というアドバイスをもらって、より自分の思い通りに滑れるようになったことを、思い出した。
・インヒビジョン
日本語では「抑制」という意味になるが、ネガティブなイメージもあるため、筆者はあえてカタカナで表現している。すぐ反応してパッとからだを動かすのではなくて、グッとこらえて内省・観察する。こういった手順(ミーンズ・ウェアバイ)を意識せずに、結果・目的にすぐ飛びつく(動く)さまをエンド・ゲイニングと表現し、戒めている。
まるで、太極拳のように動作を噛みしめながら、体重をゆっくり移していくようなイメージだろうか。先を予測するのではなく「いま、ここ」に意識を向けるという意味で、マインドフルネスに通じるかと思う。
・ダイレクション
意識・マインドにおける用語である「インヒビジョン」に対して、からだ・ボディにおける用語である。4つの方向性の原則を示す。
①首は楽に
②頭は前に、上に(脊椎との関係において)
③脊椎は長く、背中を広く
④膝は前に、お互いに離れている
ケンダルの分類でいう「軍人姿勢」の場合の、頭は後ろで、胸は前、腰は前弯が強く、骨盤前傾により背中が短くなり、膝は後ろで、かつニーイン、というイメージに対する警告のようにも見えたので、全員に当てはまる原則かなぁ、と正直言ってよくわからない。筆者は、あくまで方向性を意識するということであって、姿勢そのものを指すわけではない、と釘を刺す(この4つの原則を意識しすぎて変な姿勢になるヒトのことを、「アレクサンドロイド」と揶揄するらしい)。
また、アレクサンダーは「正しい動き」にとらわれると余分な力が入り、不自然な動きになってしまうともいう。あくまで、過程の感覚を、心身の気づきを、大切にするのだ。なんだか、わかるような、わからないような。
筆者は、「知っている:I know」と「理解している:I understand 」と「できる:I can do it」との間に、それぞれ大きな隔たりがあるという。知っていることで、わかった気になってしまうことが、よくある。わかっているのにできないことは、やってみて初めてわかる。
さっそくやってみよう。
(塩﨑 由規)
出版元:春秋社
(掲載日:2022-03-07)
タグ:アレクサンダー・テクニーク
カテゴリ ボディーワーク
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