フットボールの文化史
山本 浩
この本には、民衆のフットボールがどのように、パブリックスクールでのフットボールに変遷し、現代のフットボールの形になったかが描かれている。英国でのエリート教育にフットボールがどのように用いられ、パブリックスクールの卒業生らによるルールの整備、審判の登場の経緯、観客の登場、リーグ戦、プロ化といったことがわかりやすく説明されており、スポーツ史を学ぶ人にとっての入門書として最適だろう。
オフサイドの説明をできる人はたくさんいるだろうが、オフサイドがなぜ反則なのかを説明できる人は多くないだろう。われわれ日本人にとって、ルールは「あるもの」「決められるもの」であって、自分たちで議論して「つくるもの」ではないように思う。
なぜ、それがいけないことなのか。なぜ、そのルールがあることにより、平等や公正が保たれるのかを考えないがゆえに、ルールの変更の議論に、日本人は参加できる交渉力を持たないように思う。そして、ルールが変更されるたびに日本不利のルール変更がなされたとマスメディアは叫ぶ。
どのような時代背景や価値観があるか、主導権は誰が(どの地域の人間が)握っていて、それを日本が握られない理由はどこにあるのか。そういったことを理解すれば、スポーツの国際的競争力を不当に貶められることはなくなるだろう。
(松本 圭祐)
出版元:筑摩書房
(掲載日:2012-10-13)
タグ:スポーツ史 フットボール
カテゴリ その他
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