ダンス・コンディショニング 感じてとらえるからだの仕組みと使い方
岸田 明子
本書で紹介されるコンディショニング法「シン・ソマティクス」の「shin」は、禅における「中心/芯/心/身/精神」に由来しているとのこと。心身の無駄な力を抜き、呼吸を深め、基本的な動作を無理なく行うことで、通常のダンスレッスンでの自分の身体に対する思い込みを取り去り、今現在の状態を感じ取る。その後、構造や仕組みを学びつつ、合理的な動かし方ができるよう神経と筋肉のつながりを再構築していくというもの。実際には施術やグループレッスンなども行われるようだが、ここでは主に一人で可能な部分について、本と付属のDVDを交互に見ながら取り組めるようになっている。オールカラーで写真や図解が多用され、どのページを開いても美しい。この種の本が苦手な人でも抵抗なく手に取ることができそうだ。
実際のダンサーの生活はレッスンとリハーサルに明け暮れ、身体を落ち着いて休める余裕を持つことは難しい。また、ダンサー自身が身体の構造や仕組みに対して無知ならば、鏡や教師の言葉が、必ずしも自分の癖に気づかせてくれるとは限らず、逆に癖を強くしてしまうこともある。そういったことにあまり危機感を持てずにテクニックの追求に終始し、疲労とケガを繰り返すダンサーは多い。「身体の状態を良し悪しで決めない」「矯正しようとしない」などの言葉や、鏡を見ないで力を抜き、自分で感じ取るという手法は、そんなダンサーにとっては新鮮に感じられることと思う。本書には、「体の力を抜いて、楽に踊る」ためのさまざまなイメージが丁寧に提示されている。ダンサーの身体感覚を具体的に知りたいトレーナーの方々にも参考となるかもしれない。
ただし、文中でも述べられているように、筋力や筋持久力の向上のためのエクササイズではなく、あくまでもほぐすこと、リセットすることに重点を置いたワークなので、長年強い癖を修正できなかったダンサー、あるいは強靭な(極端な)筋運動を要求されるダンサーの場合、パフォーマンスの向上につなげるためには、かなり時間を割き、日常的に実践する必要がありそう。まずは、ハードな一日の終わりに筋肉をほぐす目的で試してみるのがいいかもしれない。
(河野 涼子)
出版元:スキージャーナル
(掲載日:2012-10-16)
タグ:コンディショニング ダンス
カテゴリ 運動実践
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