脱力のプロが書いた!「動き」の新発見
広沢 成山
本書のテーマは「脱力」。むかしから興味のあることだったので読んでみると、最初に書かれていたのは物事を習得するときの心得みたいなお話。そして第二章では身体についてのお話。「脱力」について知りたいと思っていた私には肩透かしを食らった格好です。しかし振り返って考えてみれば筆者は武道家です。単にHow to本みたいな知識の切り売りは御免という意識を感じました。何かを会得するにはこちら側の気構えであったり、基礎知識などの土台が必要であって、そこの部分を飛ばして得たものは表面上のことしかありえないと反省しました。
すごく表現がわかりやすく簡単なことのように書かれていますが、その一つ一つには深遠な事柄が書かれています。200頁ほどの単行本ですから深堀していたらとんでもない量になりそうな気がします。簡潔にまとめられたその奥には、読み手の想像力も試されているような感じさえします。「余白を活かす」という項目では、書道の作品を見るとき黒く書かれた文字だけではなく白い余白にも意識を向けなければならないというくだりがありました。こういった表現は実に哲学的。同時に本書を読むとき連なる文字だけを見るのではなく行間もしっかり見ろという筆者のメッセージと受け止めました。
「脱力」については丹田の機能を中心とした解説がわかりやすく書かれています。しかし実際に「脱力」を会得するには、本書のあちらこちらにちりばめられた必要事項を理解してこそ身につくものなのかもしれません。簡単そうに書かれた難しい本でした。
(辻田 浩志)
出版元:BABジャパン
(掲載日:2021-06-07)
タグ:脱力 武道
カテゴリ 運動実践
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