アスレティック・ムーブメント・スキル スポーツパフォーマンスのためのトレーニング
Clive Brewer 広瀬 統一 岡本 香織 干場 拓真 福田 崇 吉田 早織 安藤 豪章 馬越 博久 飯田 聡 大西 史晃 越田 専太郎 倉持 梨恵子
「動作」という言葉をここまで詳細に、多角的・多面的に、そして俯瞰して解説したものは本書をおいてほかにないと言える。
競技動作全般、中でもムーブメント=「移動」スキルに関する解説とトレーニング方法が紹介されている。ムーブメントとは動きという意味以外に、「流れ」という意味もあるようだ。ラン、方向転換、ジャンプはスポーツのパフォーマンスを支える非常に重要な基礎能力だ。それらを向上させる手段を解剖学・運動生理学・バイオメカニクスにおける根拠を示しながら解説されている。
動作が年齢によりどのように発達するのかについても多くのページを割いて説明されている。これは指導者にとっても、その指導を受けるアスリートにとっても有益である。自分が指導しているアスリートの成長段階を知ることで、最適なトレーニングの種目や負荷量を自信をもって決断できる。
トレーニングにおける「動作」という言葉は、すでに広く普及している。ファンクショナルトレーニングやピラティスなど「動作を鍛える」トレーニングメソッドはいまや限られたトップアスリートが受けられるサービスではなく、スポーツ愛好家からスポーツ習慣はなくとも健康に関心の高い一般の方にも容易に体験できる時代となった。それゆえ、動作という言葉が一人歩きをしている感は否めない。本書を読むことで動作の解釈はより明確になり、応用力・運用力は確実に向上するだろう。私自身、動作という単語の定義が曖昧だったのだが、かなり明確になったと感じる。
さまざまなトレーニング方法を点とするなら、本書はそれらをつなぎ合わせ、より高い成果を生み出す線の役割を果たす。ややアドバンスな内容であるが、学びを続ける指導者にぜひ読んでいただきたい。
(川浪 洋平)
出版元:ナップ
(掲載日:2019-02-01)
タグ:動作 トレーニング
カテゴリ 指導
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アスレティックトレーニング学 アスリート支援に必要なクリニカル・エビデンス
広瀬 統一 泉 重樹 上松 大輔 笠原 政志
アスリートに対する科学的な支援や安全保証の重要性について理解が深まってきているが、それを実現する人材および環境はまだ充分と言えない。基礎となる学問を普及すべく、各分野に精通する執筆者が名を連ねた。
日本におけるアスレティックトレーニングの背景を概観したのち、メディカルチェックやフィジカルチェックをどのように行うか、緊急時対応計画を始めとした緊急対応、傷害予防、コンディショニング、リハビリテーション、各部位の外傷・障害、姿勢評価と動作分析、さらには実際の取り組み例まで網羅する。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:文光堂
(掲載日:2021-02-10)
タグ:アスレティックトレーニング
カテゴリ スポーツ医科学
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コーディネーション・エクササイズ
竹内 敏康 渡邉 孝 神崎 公宏 広瀬 統一 小林 秀一 山崎 浩子 東根 明人
よい動きをつくる“トレーニング”
近年のスポーツトレーニングには、筋肉に対するレジスタンス・トレーニングや呼吸循環器系に対するサーキット・トレーニングなど非常に多くの種類のトレーニングがある訳だが、今回ご紹介するコーディネーション・エクササイズはいわば「情報系、神経系」のトレーニングである。今から30年ほど前に旧東ドイツでまとめられた概念を基本に、このトレーニング研究で知られる監修者が、自らが主催する「コーディネーショントレーニング研究会」のメンバーの協力を得て、よりわかりやすいトレーニングの実技例を多数用意し、種目別に紹介したのが本書である。
わが国におけるスポーツのトレーニング方法を改めて考えてみると、まず部分的な基礎練習から入り、徐々に練習の各部分を連結していく形で最終的に実戦練習に入るという、いわば部分から全体へという流れで進めていくのが一般的である。理論としてこの流れは決して間違っているものではないが、その方法で進めようとすると、往々にして初期の練習内容が単純化され過ぎるきらいがある。そうなるとトレーニングの主体者である生徒や選手にとっては、あまりにも自らが描いた憧れのスポーツ像とのギャップがありすぎて、この初歩段階ですでに興味を失うケースも多々ありうる。さらに、この基本練習段階では繰り返し同じ動きを強制されがちなことから、またまたギャップは広がり、結局ここで早々にドロップアウトとなるケースは珍しくない。これを自然淘汰と呼ぶのは少々乱暴な話である。こと幼年期、少年期にある子どもたちには、生涯にわたってスポーツに親しんでもらいたいとの願いから、こういった基礎的な練習時期にはなるべく楽しい雰囲気で、あるいは興味を失わせない工夫をしながら練習が進められることが望まれるわけである。しかし、残念ながら、必ずしもそういった練習がわが国のすべてのスポーツ指導者に支持されているとは思えない。そういう意味で、本書のような視覚と聴覚と触覚と、場合によっては第六感をも使う必要のありそうなトレーニングメニューの数々は一見の価値あり、である。
「守・破・離」
本書の特徴は4つの重要なポイントが各トレーニングに多分に盛り込まれていることである。第一に「不規則性」。これはエクササイズにあえて順番を設けず、どれからでもランダムに練習できるようにしてあること。第二に「選択反応」。エクササイズによっては2つないし3つの刺激に対して同時に反応するように工夫されていること。第三は「身体の軸」。バランスを保つうえで重要な身体の軸をここではわざと不安定な状態にさせて、バランス感覚を養おうとしていること。そして、第四に「スローテンポ」。「ゆっくりと(動きを)行うことによって自分の筋肉や関節の動きがわかり、クイックなテンポに置き換えても動きがはっきりと理解できるというメリットがある」こと。以上のように、本書の根底には生徒や選手が飽きないような練習こそが神経を最も刺激するトレーニング方法であるという主張が流れているのである。さらに著者は「『守・破・離』という言葉がありますが、これはエクササイズを行ううえでコーチがしっかりと把握しておきたいステップ」として、まずコーチは「守」すなわちこのエクササイズに習熟し、「破」原理原則が理解できたら自分で工夫して新たな方法を模索し、「離」さらに高いレベルを目指し、最終的には独自のエクササイズを構築すべしと説いている。コーディネーション・エクササイズは無数に存在するということでしょう。コーチの皆さん、是非とも本書を手に取り、自らの独特なエクササイズをつくってみませんか。
(久米 秀作)
出版元:全国書籍出版
(掲載日:2005-02-10)
タグ:コーディネーション
カテゴリ トレーニング
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