ランニングへの招待
有吉 正博
ジョギング・ブーム、ランニング・ブームは、ブームとしては下火かもしれないが、走りつづける人が増え、各マラソン大会の出場者も増える一方である。ブームは新しいうちをとらえる言葉であり、定着したとき、世の中は次のブームを求めているだけといえるだろう。だから、これからジョギング、ランニングを始めようとする人があとをたたないのも当然であり、何よりもブームの定着を証明するにほかならない。
本書はそういう「走り出そう」とする人のためのガイドブックである。走ることはリラックスすることと切り離せないが、この本は自らもランナーである著者が、まさにジョギングをするようにリラックスしてその楽しさ、方法、注意事項を興味深く書き綴ったものである。著者は、中学からずっと陸上競技を続け、大学時代は4年連続箱根駅伝を走り、現在も毎朝10kmほどのランニングを欠かさずといったランニング生活と並行して、東京教育大学体育学部、同大学院、助手、講師、助教授と学問上のキャリアも積んでいる。面白いのは研究する立場だけでなく、研究された経験も豊富に持っている点で、生理学上のランナーのためになる事柄を楽しく語ってくれる。
入門書であるから、初心者が知りたいことのほとんどは網羅されている。ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』や貝原益軒の『養生訓』、三島由紀夫の『葉隠入門』などの書からも引用をたくみになし、より興味深く読み進めるようになっている。「さあ、走るぞ」という肩肘張った姿勢より「オレも走ってみるかナ」という軽い気持ちで読むほうが、ランニングの世界により強く誘われるかもしれない。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ランナーズ
(掲載日:1981-08-10)
タグ:ランニング
カテゴリ 運動実践
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スポーツQ&Aシリーズ ランニング ワンポイントコーチ
山地 啓司 山西 哲郎 有吉 正博
この本を含め、「スポーツQ&Aシリーズ」は10冊になった。実際にそのスポーツを行う者にとって身近で重要な疑問を掲げ、それに対して精通した専門家が回答するスタイルであるため、何かの疑問が生じたとき、似たような質問に当たればよいし、初めから通常の本を読むように読み進んでもよいし、ちょっと時間があるときに順序かまわずパラパラと読んでもよい。その意味で便利でまた有益な書だといえる。
全体の構成は、「ランニングの基本知識編」で26問(山地、有吉担当)、「ランニングの科学編」で26問(山地担当)、「ランニング技術編」で91問(山西担当)、「健康管理編」で24問、さらに用語解説と付録の頁(都道府県陸上競技協会の所在地、全国ランニング大会の一覧)となっている。図表、写真も豊富でわかりやすい。その意味で、この一冊を座右に置くと、いわばランニング百科事典としても用いることができるだろう。
ランニングやジョギングはすでにブームというより現代人のひとつのライフ・スタイルとして定着している観がある。身近な人でランニングをしている人は何人も見出すことができるだろう。しかし、そのうちの何人が悩みを持たないといえるだろうか。真剣であればあるほど幾多の疑問や困難を抱えているものだ。そういう人へのこの一冊を勧める。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:大修館書店
(掲載日:1983-07-10)
タグ:ランニング
カテゴリ 運動実践
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危険なジョギング 歩け歩け健康法
サイモン・ウィクラー 有吉 正博
本書の原題は“Walk Don’t run”、つまり、「走らないで、歩こう」という意味であるが、決してジョギングを否定しているわけでなく、ジョギングの危険性を指摘、その危険をこうむる可能性がある人は、歩くことに目を向け、積極的に速歩を試みようというものだ。
全体15章の章題を並べると、内容がおおよそ理解できるだろう。以下順に記そう。「なぜ歩かなければいけないか」「歩き方のコツ」「どのくらい歩けばよいか」「歩行の高揚感」「危険だらけのジョギング」「裸足のすすめ」「子供の足に注意」「足の自己診断法」「足を強くする方法」「こんな靴は履くな」「足の手入れ」「こんなときは歩くな」「歩かないとどうなるか」「遅れている足の研究」「クルマに乗るか」
また、各章から印象深いくだりを列記しておこう。
「自然観察のための山歩きや野歩きも十分とは言えない。ただそれを毎日の習慣とし、しかも最低1.6キロくらいはとまらずに速足で歩くことができるならばよい」「美容体操もよいが、歩行の代わりにはならない。1.6キロ歩けば、およそ2000回もお尻を大きくゆすることになるが、美容体操ではどうだろうか」「完璧な足は存在するが、完璧な靴などない」
歩くことは人間にとって自然なことだが、その自然性から私たちは遠く離れて生活し始めた。ふと立ち止まり、本書を読むことも意義あることだろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:TBSブリタニカ
(掲載日:1984-08-10)
タグ:ウォーキング 速歩 健康
カテゴリ 運動実践
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