カラダの意外な見方・考え方
林 好子
近年、動作解析などが進み身体の分析は様々な角度からなされるようになりました。自分の身体は自分の思うがままに動かせる。そんな風に思っていたら実はそうではなくてうまく身体を動かす能力がない、あるいはバランスの悪さゆえに思っていた動きと違うことをしているということに気づきました。医科学は身体の内から外からその原因を明らかにしようとしています。
正直多岐にわたる身体の見方は出尽くした感があったのですが、本書のタイトルの通り身体に対する「意外な見方や考え方」がまだまだあるようです。マクロとミクロとの見方の違いなのかと考えながら読み進めていくとどうやらその考え方も正しくなさそうです。
理学療法士・合気道・アレクサンダーテクニークというそれぞれ違った目線は自由奔放ともいえる身体の見方を提案してくれました。純粋なアレクサンダーテクニークの視点でもないので、どこから何が飛んでくるかわからない期待感を持ちながら読んでしまいました。
それぞれの項目で筆者のコラムが登場するのですが、ユニークな発想から生まれる身体感はときおり考え込んでしまいました。その人のそのときの心理状態で同じ時間が長く感じられたり短く感じられたりして、その違いにより身のこなしが変わるという解説もありました。これは納得です。余裕のあるときの1時間と焦っているときの1時間ではできる動きに大きな差が出るのはわかります。しかし今までそういう違いを身体を通して見ることはしていません。そういう発想がなかったからです。
やっとここで気づいたのは「カラダの意外な見方考え方」というタイトル表記のうち「意外な」というワードだけ異様に大きく色も変わっています。こんなところにしがみついて悩む人はいないだろうと思いますが、スポーツ医科学の身体の見方と筆者の身体の見方の違いがわかったような気がします。前者が純粋に身体や動作の分析であるのに対し、後者は何か別の要素と身体を絡めた上での見方をされているのではないでしょうか。心理・時間・文化・気候など本書で述べられていることは純粋な身体についての考察にとどまらず動きのバックグラウンドを見過ごしていないところに、本書のユニークさであったり特徴があるのだと感じました。どちらがよいとかいう問題ではなくこういった発想は時には現実に即していることもあり無視できない場合もあるでしょう。
環境まで身体を見る要素に加えてしまうと発想は無限大になりそうです。身体を解き明かすためのヒントはいくらあってもいいと思います。
(辻田 浩志)
出版元:BABジャパン
(掲載日:2021-10-11)
タグ:見方 文化
カテゴリ 身体
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