学校スポーツ ケガをさせずに強くする
森部 昌広
フィジカルトレーニングやコンディショニングの重要性を訴える内容の一冊。
スポーツの指導者の中で、身体能力を向上させるトレーニングや体調管理について、「必要ではない」と思っている人はどのくらいいるのだろうか? おそらく、ほとんどの指導者は、「必要だ」と認識しており、何らかの取り組みをしていると思う。
ところが最近、ちょっとした異変が起きている。「フィジカルトレーニングは必要ない」という意見が台頭してきたのだ。サッカー指導者のジョゼ・モウリーニョ(2010年現在イタリア・インテル監督)の流儀が注目され始め、日本でも『テクニックはあるが「サッカー」が下手な日本人』(村松尚登著、ランダムハウス講談社)が出版され、売れ行きも好調らしい。もちろんこれは、身体能力の向上やコンディションを整えることを軽視するものではなく、実際に起こりうる状況を想定した練習を繰り返すことで、それに必要な身体能力も必然的に向上するという考えで、フィジカルトレーニングとプレー練習を別々に行わないという点がこれまでの主流と違っている。
ただ、フィジカルトレーニングについて、どのように考えていようとも、競技スポーツにおいて身体能力の向上やコンディショニングが重要事項であることには変わりはない。
本書のタイトルの「ケガをさせずに強くする」ことは、種目や国やレベルが違っても、スポーツの現場における共通の命題なのである。ところが現状では、フィジカルトレーニングやコンディショニングの重要さが繰り返し叫ばれている。
なぜか。おそらく、それらが正しく理解・実践されていないせいであり、本書がそれを基礎からわかりやすく丁寧に解説してくれている。スポーツ指導に携わる人は、本書の内容をよく理解したうえで、各現場に合ったアプローチ法を研究してほしい。
(尾原 陽介)
出版元:毎日新聞社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:トレーニング
カテゴリ スポーツ医科学
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