社会的処方 孤立という病を地域のつながりで治す方法
西 智弘 藤岡 聡子 横山 太郎
日本の高齢者の3割が社会的なつながりを持っていない、というデータがある。
超高齢社会に突入して久しい日本において、高齢者の3割というのはかなりの数にのぼる。ほかにも、貧困やヤングケアラーなど、おそらく一昔前までは見えやすい、だからこそ地域社会のなかでケアされ、表出されることのなかった問題がいま、“見えづらい”という点を含めて、顕在化している気もする。もちろんその一昔前だってその時なりの問題はあっただろう。現在に至る過程には核家族化、価値観の変様、高度化したサービスなど、さまざまな要因があるのだろう。
ところで、本書によれば研究上では「孤立」と「孤独」は明確に区別されているという。
社会的孤立:家族やコミュニティとほとんど接触がないこと
孤独:仲間づきあいの欠如あるいは喪失による好ましからざる感じをもつこと
孤独は主観的な状態を示すのである。
孤立を示すデータには少し驚く。まず国勢調査では2015年の単身世帯は35%となっている。生涯未婚率は男性23%、女性が14%である。ちなみに1990年はというと、それぞれ23%、6%、4%であった。
高齢単身男性では、会話の頻度について、15%が2週間に1回以下。さらに、日常のちょっとした手助けを頼るひとがいない、という割合が30%にも及ぶ。孤独死という言葉が頭に浮かぶ。
本書は社会的処方というキーワードであらたな枠組みをつくる、ということを意図している。一昔にあった“おせっかい”を“社会的処方”という概念でくるんで、活動を促すことを目的としている。すべてのひとをリンクワーカーとしてとらえる。そして、それが文化として根ざすことで、より良い社会につながっていくのではないか、という提案である。
当然孤独を好むひともいる。それらは尊重しつつも、どんなに細い糸でも絶たないことで、孤立を防ぐことが必要だと。医療機関に持ち込まれる相談の2、3割は社会的な問題といわれる。心身の訴えというのは氷山の一角である。その水面下の文脈抜きでは、そのひとの話を聞き、診ていることにはならないのかもしれない。
(塩﨑 由規)
出版元:学芸出版社
(掲載日:2024-02-22)
タグ:社会的孤立
カテゴリ その他
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