勝利への「併走者」 コーチたちの闘い
橋本 克彦
「勝ち負けだけを追求するのではない」では何をもってスポーツの目的とするのか? お金や名誉のため、自分の限界に挑戦するため、チームのため、人間としての成長のためなど、そこには選手の数だけ無限の言葉が並ぶ。
しかし、著者の関心は別なところにある。「いったい人は、なぜ、どのように勝ったり負けたりするのか。その過程が描く曲線、ドラマはどのように生まれ、頂点を描くのか」
著者は、選手の人間としての生き方の曲線を知りたいと思い、コーチを訪ね歩くことになった。なぜコーチかというと、選手が描く人間のドラマの当時者でありながら、一方ではもっとも客観的な観察者であり、一番近い目撃者がコーチだからだ。コーチこそが、スポーツ選手の描くドラマの報告者としてふさわしい、そんな思いからできたのが著書である。
1978年サッカーワールドカップで優勝した、アルゼンチン代表監督のメノッティはこう表現する。
「世の中にサッカーなどは存在しないんだ。サッカーをプレイする人間だけが存在する。だからサッカーが進歩したというなら、それは人間の進歩にほかならない」
勝ち負けを超越したもの、いや、勝つことにこだわるからこそ生まれる物話がいくつもある。
(森下 茂)
出版元:時事通信
(掲載日:2012-06-04)
タグ:ノンフィクション 指導
カテゴリ 人生
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