40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか 体温の科学から学ぶ猛暑のサバイバル術
永島 計
「体温ってなんですか?」と聞かれて、あなたは自信を持って答えることができるだろうか?
スポーツ選手の脱水によるパフォーマンス低下から、高齢者に起こる室内での熱中症まで、暑熱環境が人体に与える環境は大きい。この暑さへの対抗策はなにがあるだろうか。本書の結論を先に申し上げると、対抗策は水分補給が最も有効かつ効率的である。
なんだ当たり前じゃないか、と思われるだろう。しかし、この当たり前がきっちりとできていないことは、毎年の熱中症のニュースを見れば明らかであろう(熱中症による救急搬送は2019年8月だけで3万6千人である)。水を飲む、という行為は至極簡単なはずなのに。つまり、重要なのはなぜ適切な水分補給ができていないか、どうすればできるようになるかである。
本書はこの結論に至るまでに、体温とは何か、気温はどのように体温に影響を与えるか、身体に備わっている温度センサーには何があるか、それが正常に機能しなくなるのはどんなときか、またもちろん水分補給以外の体温を下げる手段についても解説している。
非常に興味深かったのは、脱水と体温上昇により、人は「寒く感じる」ということだ。暑さによる影響を受け始めたタイミングで、人体に備わっている温度センサーは容易に狂い始める。余談だがこれは寒冷環境でも同じようで、人は低温環境に一定時間さらされると「暑く感じ」、「服を脱ぎ始める」という矛盾した行動をとるという研究がある。雪山で遭難し凍死した人の遺体は、裸に近い服装で発見されることが多いそうだ。
話を戻して、水を飲む、という簡単な行為でも、個人レベルでのコントロールは難しい。トレーナーや指導者側による管理が必須だ。
コロナウイルスによる自粛もピークは過ぎ、徐々に日常へ戻ろうとしている。スポーツ活動も再開していこうという中、安全なスポーツ活動再開のために暑さ対策について本書で学んでいただけたらと思う。
(川浪 洋平)
出版元:化学同人
(掲載日:2020-05-23)
タグ:体温 熱中症
カテゴリ スポーツ医科学
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