ピーキングのためのテーパリング 狙った試合で最高のパフォーマンスを発揮するために
河森 直紀
選手をサポートするトレーナーの方であれば、試合に勝って勝利の喜びを分かち合うこともあれば、日々厳しい練習を積み重ねながらも、コンディショニングがうまくいかず、思い通りのパフォーマンスが発揮できずに試合を終える選手を、ただ歯がゆい思いでみているしかない経験をしたことがあるはずだ。本書はそんなあなたに「フィットネスー疲労理論2.0」という武器を授ける。
内容はピーキングを構成する手法の1つ、テーパリングに焦点をあてて解説している。第1章ではテーパリングの定義とピーキングとの違いを明確化し、第2章でテーパリングのメカニズムを解説。またPreparednessという概念を紹介している。Preparednessとは、パフォーマンス発揮のための筋力や持久力などの身体的ポテンシャルのことである。第3章では実際のテーパリングの介入方法を4つのシナリオを例に紹介している。
冒頭で申し上げた通り、本書の最重要項目は「フィットネスー疲労理論2.0」である。本書はこの理論を理解するための一冊と言っても過言ではない。少し紹介しよう。
古典的な超回復理論はトレーニング後の疲労という一つの要因による体力レベルの変化をみせる一元論モデルである。それに対してフィットネス−疲労理論はフィットネス(体力レベル)と疲労の二元論モデルである。これをもとに発展させたものを、「フィットネス−疲労理論2.0」として、著者の河森氏が紹介している。簡単に説明すると、複数のフィットネスと疲労が存在する多元論モデルである。たとえば最大筋力におけるフィットネスと疲労、最大酸素摂取量におけるフィットネスと疲労、などで構成される。
パフォーマンスに影響を与える要素は数多くあり、また目標とする試合で最も必要とされるパフォーマンスも、競技種目や対戦相手との相性などによって変化する。それらが可視化・数値化、比較可能なものとなり、テーパリング計画の優先度の決定が可能になる。もちろん、テーパリングを必要としないオフシーズンのトレーニング計画の立案にも応用できるだろう。
著者は河森直紀氏。アメリカとオーストラリアの大学院で博士号を取得し、シンガポールの政府機関や国立スポーツ科学センターでのトレーニング指導を歴任。理論と実践に裏付けられた本書の内容は必ずあなたの武器になるはずだ。
(川浪 洋平)
出版元:ナップ
(掲載日:2020-04-25)
タグ:テーパリング ピーキング
カテゴリ スポーツ医科学
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