駅伝流 早稲田はいかに人材を育て最強の組織となったか?
渡辺 康幸
一昨年の2011年に箱根駅伝で栄冠をつかんだ、渡辺康幸・早稲田大学競走部監督の著作。
「箱根で勝つためには、こんなにも気が遠くなりそうなディテールを重ねなければならないのか」というのが読後一番の感想。育成力、指導力に加え、マネジメント力、政治力――。実業団以上のレベルだと細分化されるこれらの分野を、学生スポーツの監督は一手に引き受けなければならない。さらに、各大学とテレビ局が威信と莫大な資金をつぎ込む一大イベントとあって、そのプレッシャーは計り知れない。
また渡辺氏が監督に就任したとき、早大駅伝は低迷期の真っただ中にあった。同大OBで日本長距離界のエースとして活躍した渡辺氏とあっても、現役時代の知識と経験だけでどうにかなるものではない。頼れる参謀や早大におけるスポーツ改革の先駆者である清宮克幸氏(現ラグビートップリーグ・ヤマハ発動機ジュビロ監督)の後押しを得て、時には進退を懸けながら部を改革。就任7年目にして苦しみながら勝利をつかんだ。
本書はそれに至るまでの奮闘記、組織論をメインにしつつ、年間スケジュールや練習の組み方、スカウトの実際などといった「駅伝入門書」としての側面も持っている。お正月のテレビ観戦だけでは見えない駅伝の奥深さを知るには格好の一冊だ。
(青木 美帆)
出版元:文藝春秋
(掲載日:2013-05-29)
タグ:駅伝
カテゴリ 指導
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