モチベーション入門
田尾 雅夫
トレーニング指導をする際に、必ず話すことがある。「私に言われたから、受身でやるのと、自らが強くなりたいと思ってやるのでは、同じプログラムでも効果は大きく違ってくるよ」と。逆に言えば、選手がその気になってくれれば指導の90%は終わったようなものだ。
いかに選手のモチベーションを上げるか? そればかり考えているつもりだった。しかし、モチベーションについてあまりにも無知だったということに、この本を読んで気がついた。
モチベーションとは何か? 「モチベーションとは意欲です。意欲には目的が欠かせません。何か得たいもの、したいことがなければ、動機付けられて何かをしようという気持ちになれないものです。欲しいという気持ち、動因と、欲しいという気持ちを起こさせるもの、誘因の2つの要因のどちらもあることが、動機付けの不可欠の前提です。この2つの要因をどのように組み合わせるかが、モチベーションの考えの基本です」
アメとムチの論理についても、知らなかった。どうしてもこの「外」の論理が好きになれずにいた。人間はもっと賞罰がなくても頑張れる、そうなってほしいと思っていた。そう内発的動機付けによっても人はモチベーションが向上すると言う。そういった「内」の論理があることを知り、思わず頷く。
サッカー元日本代表監督のオシムは、モチベーションを上げるのに賞罰を与えることを嫌い、こう話す。
「モチベーションとは、選手に自分が考えるきっかけを与えることだ」
そして、前楽天監督の野村克也は、こんな風に言う。
「ナポレオンは、人間を動かす2つのテコがある。それは恐怖と利益であると言った。私はこの2つに尊敬を加えたい。リーダーは利益と尊敬と、少しの恐怖で組織を動かしていくべきで、その潤滑油がユーモアだ」と。
(森下 茂)
出版元:日本経済新聞社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:モチベーション
カテゴリ 指導
CiNii Booksで検索:モチベーション入門
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:モチベーション入門
e-hon