コーチングの技術
菅原 裕子
コーチングと聞くと、スポーツにおける監督から選手への指導が1番に思い浮かぶが、実際にコーチングが行われるのは、スポーツだけに限らない。仕事に関してや人間性の教育、躾に至るまで、さまざまな場面があり、その方法も多種多様である。
もともと「コーチ」とは馬車が語源で、人を目的地へ運ぶことが言葉の由来だ。東京から大阪へ行くという目的に対して、飛行機、新幹線、車などの選択肢の中から最善策を選んで目的達成に向かわせるのがコーチングである。
このことは、選手を育てる際、筋力や敏捷性、技術力、人間性などの要素のどれを高めるか。というようなケースに当てはまる。これらの要素にどの様にアプローチしていくかが、コーチングの重要な要素となる。
上記の例の中で、飛行機で行くのが最善として、自らその最善策を選べる人に育つか、道を示されなければ動けない人に育つか。指導の進め方によっては結果が同じでも内容やプロセスが大きく違ってくる。指示がなければ動けない「指示待ち人間」になるのもコーチングの結果であり、理想の結果につなげるためのコーチングが求められる。そのための効果的なコーチングには、相互の信頼が大切になると筆者は訴えている。
実際のコーチングには本書の様な指南書はあってもマニュアルはないと私は考えている。本から得た知識と、指導経験。そして何より本人を思う気持ちがコーチングには必要ではないだろうか。コーチングとは形ではなく、気持ちと気持ちを結ぶものである。
筆者も、コーチングは指導法であると同時にコミュニケーションでもあるとし、指導の際の相手の心の開き方や育成中の我慢の大切さ、相手の可能性を信じることなど、コーチングの軸となる人間観を重要視し、それに応じた具体的な指導法を本書で紹介している。
自分の指導法を見直したり、コーチングに関する見方や考え方を広げたい方におすすめの一冊である。コーチングの幅を広げ、結果につなげるために活かしていただきたい。
(山村 聡)
出版元:講談社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:コーチング
カテゴリ 指導
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