もうダイエットはやめよう! ボディウェイト・コントロール 健康のための体重調節
西端 泉
この本のタイトルは、『もうダイエットはやめよう! ボディウェイト・コントロール
健康のための体重調節』である。この「もうダイエットはやめよう!」には、ダイエットという言葉を使うのはやめようということと、やせてるのにダイエットするのはやめようという2つの意味が込められている。
そもそも我々がよく聞くダイエットという言葉は、いつしか外来語本来の「日常の食物」や「食事」という意味から離れ、今や意味不明な日本語として使われてしまっている。ダイエットの定義が明確でなく科学的根拠が不明なダイエット本が散見される現状を踏まえ、著者は科学的見地から減量方法を知ってもらいたいという趣旨で本書を執筆している。
具体例を挙げれば、現代日本人の肥満の原因は、巷で言われているように食生活の欧米化による摂取エネルギーの増加と、これに伴う脂肪摂取の増加が原因なのだろうか。確かに本書が示す資料によれば、脂肪摂取の割合は近年増えてきている。だが1日の総摂取エネルギーを見てみると、ピークだった1970年と比較して15%も減少しており、実質の脂肪摂取量はむしろ減少している。一方で1日の平均歩数は年々減少していることに見られるように、現代日本人の肥満の原因が摂取エネルギーや脂肪摂取の増加ではなく、むしろ身体活動量が低下していることが主因であると言える。
それから減量の運動指導においては、「有酸素運動は低強度がよい」とよく言われる。運動強度が低いほうがよい理由としては、運動強度が高くなると脂肪よりも糖質が消費される割合が多くなるから、というのがもっぱらである。この根拠として昔のある文献が引き合いに出されるのであるが、そこで示されているのは脂肪を消費する「割合」であって「量」ではない。それに減量において重要なのは、消費される脂肪「量」のほうであろう。確かに運動強度が高くなれば消費される脂肪の割合は小さくなる。だが同時に消費エネルギーが増えるので、計算してみると実は消費される脂肪量は低強度よりも多くなることがわかる。ということから、本書で著者は高強度を推奨している。無論、対象者によって強度の調整をする必要はあるだろう。紙面の都合上、この辺りの詳しいことは、本書で詳しく解説されているので機会があればぜひ読んで頂きたい。
総評としては、語り口が研究者らしく明解であるので、読み終わってある種の清々しさを感じる。ちゃんと参考文献が明示されていることから、我々のような運動指導者が読んでも著者の解説には説得力があるように思う。ただ一つ惜しい点は、本書の読者には一般の人も想定されているので、内容的には入門編に止まっているところだ。これはこれで運動指導者を目指す学生や若手指導者にとっては、十分に有用な書籍になると思うが。この本を発展させてより専門的な内容に深化していけば、運動指導者が読む専門書としての評価は、より高まることだろう。
(水浜 雅浩)
出版元:ラウンドフラット
(掲載日:2015-11-26)
タグ:体重 ダイエット
カテゴリ 指導
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もうダイエットはやめよう! ボディウェイト・コントロール 健康のための体重調節
西端 泉
本書は「こうやって痩せましょう」というダイエット本ではない。さらには文中において、本来「食事」を意味する「ダイエット」という言葉を、「減量」という意味で使わないようにしている。栄養士である著者の、体重管理に関する誤解が広まらないようにという願いが込められている。
前半では、減量が必要なのは肥満かつ関連した疾患や障害がある(発生の恐れのある)人のみと説く。無理な減量や痩せ過ぎのリスクも、豊富な図表とともにきっちり記載されている。そして後半では、身体活動量を増加させることによる肥満解消の方法を紹介する。
トレーニングの場に、「痩せたい」とやってくる人は少なくない。彼らに対して専門家がどのような説明・対応が望ましいかがひしひしと伝わってくる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ラウンドフラット
(掲載日:2015-04-10)
タグ:体重管理 減量 食
カテゴリ 指導
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