生涯スポーツ実践論
川西 正志 野川 春夫
スポーツ業界や体育業界との関わりがなくとも、生涯スポーツという言葉を耳にしたことのある人は少なくないだろう。
「生涯にわたる各ライフステージにおいて、生活の質(QOL)が向上するように自分自身のライフスタイルに適した運動・スポーツを継続して楽しむこと」と本書冒頭で著者らも定義しているヨーロッパ生まれのこの概念は、一見当たり前のことに思われるものの、その内側に実に多様な要素や問題を内包している。
たとえば、生涯スポーツを考える上でイメージしやすい様々なスポーツイベントだが、その全国大会とも言える「全国スポーツ・レクリエーション祭」が20回以上にもわたって開催されていることを果たしてどれだけの人が認知しているだろうか?
ほかにも世界各国と我が国の生涯スポーツ政策の違い、青少年や女性、障害者や高齢者との関係、さらにはスポーツ・スポンサーシップや施設(クラブ)マネジメントに至るまで、生涯スポーツを軸に据えながらそこから派生する沢山のトピックを、本書は平易な文章と多くの事例やデータ紹介によりわかりやすく解説してくれている。とくに、2000年からの「スポーツ振興基本計画」に基づき企業や学校主導(社会体育)から地域主導(コミュニティ・スポーツ)へと変遷して行く環境下で大きな役割を果たしている総合型地域スポーツクラブへの詳細な言及は数多く、施設運営面においてはある意味対極に位置しながらも、共存共栄を願って模索を続ける民間スポーツクラブの現場指導者としては参考となる資料や事例が盛り沢山だったことも強調しておきたい。
スポーツ振興基本計画の後を受けるような形で、「スポーツ立国戦略(案)」も文部科学省より発表されたが、その中でも引き続き“ライフステージに応じたスポーツ機会の創造”すなわち、生涯スポーツの機会創造が重点戦略として挙げられている。母体ともなった“スポーツ・フォー・オール”のムーブメントが定着してから30年あまり、我が国の生涯スポーツが進化・定着しようとする重要な時代にわれわれは立ち会えているということも改めて思い起こさせてくれる一冊である。
(伊藤 謙治)
出版元:市村出版
(掲載日:2012-10-16)
タグ:生涯スポーツ
カテゴリ 運動実践
CiNii Booksで検索:生涯スポーツ実践論
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:生涯スポーツ実践論
e-hon
選手が育つポジティブ・コーチング
Raymond M. Nakamura 野川 春夫 永田 幸雄
ありそうでなかったコーチングの本質を扱った本。スポーツ指導が一方的な押しつけでは成り立たなくなった状況からしても、指導者は勤勉でなければならないことがうかがい知れる。時には選手とコーチのやり取りから課題を抽出し、時にはコーチにテストを課すなど、この本の特によいところは、その“リズム”にある。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:サイエンティスト社
(掲載日:2002-02-10)
タグ:コーチング
カテゴリ 指導
CiNii Booksで検索:選手が育つポジティブ・コーチング
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:選手が育つポジティブ・コーチング
e-hon