フルスイング
高山 信人
高山豪人さんを知っている人は、ほとんどいないだろう。
プロ野球選手を夢見る彼は、24歳という若さで交通事故によってその生涯を閉じる。そんな彼の野球人生を、父親である高山信人氏が綴った。
著者は最後に日本の野球界に対する率直な思いを書いている。そんな中で、指導者についてこう言う。
「タイムリーエラーやチャンスで三振した選手を頭ごなしに叱るシニアの監督も大勢いたが、その監督は自分のための試合をしているのであって子供のための試合をしていないと感じた」
残念ながら、このような指導者は野球に限らず日本全国に大勢いる。私自身、指導者の端くれとして考えさせられる言葉である。
筑波大学サッカー部監督の風間八宏氏は、指導者とは何か? こんな風に言っている。
「子供が自分の道を自分で選んでいけるように環境をつくってあげるのが指導者です。子供たちの才能を引き出すことが重要であって、指導者が思ったことを子供たちにやらせることが重要なのではない」
ある一人の無名な青年の人生を綴った本である。しかし、そこから考えさせられることはあまりにも多い。人は、いつかは死ぬ。豪人さんのように唐突に夢を終えなければならないこともある。
だから思うのである。
「たかが、野球。されど、野球」
目の前のことに全力を尽くすことの大切さを。
(森下 茂)
出版元:碧天舎
(掲載日:2012-10-16)
タグ:野球
カテゴリ 人生
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