子どものメディカルフィットネス
日本健康スポーツ連盟 都竹 茂樹 梶岡 多恵子
副題に「レジスタンストレーニングによる体ほぐしの運動」とある。体ほぐしは、平成10年度の学習指導要領改訂で出てきた言葉で、「体と心の両面から健康をとらえる」ことを目指している。その狙いは、(1)体への気づき、(2)調整、(3)仲間との交流だそうだ。
全体は、理論とトレーニングの実際から成り、トレーニングでは自重、チューブ、ボール、水中運動などが取り入られている。「体ほぐし」というとストレッチやどちらかというと力を抜く運動を想定するが(もちろんストレッチについても記されている)、レジスタンストレーニングという筋肉を使い、体を意識させ、体や動きをコントロールする運動が上記の(1)~(3)につながるという道筋をわかりやすく説く。
近年は高齢社会と老人医療費の高騰から、老人問題が大きな問題とされているが、国の将来を担うのは子どもである。子どもの身体への着目が始まり、いろいろな書物も出てきた。これもその中の1冊であるが、「子どものメディカルフィットネス」と呼んだ着眼点が面白い。
財団法人日本健康スポーツ連盟監修、都竹茂樹、梶岡多恵子著 B5判 134頁 2001年10月30日刊 1800円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:ぎょうせい
(掲載日:2002-05-15)
タグ:メディカルフィットネス 子ども
カテゴリ スポーツ医科学
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子どものメディカルフィットネス レジスタンストレーニングによる体ほぐしの運動
都竹 茂樹 梶岡 多恵子
レジスタンストレーニングが「体ほぐし」?「筋トレ」でしょ? 誰もがそう思うに違いない。私もその一人。
レジスタンストレーニングのポイントは、どれだけ重いウエイトを持ち上げるかではなく、刺激を与えたい筋肉にどれだけ意識を集中できるかという点にある。それが、体への気づきを促し、緊張とリラックスのコントロールを可能にし、深い呼吸は心身のリラックスを導く。そういう風にレジスタンストレーニングをとらえたことはなかったので、なるほどと納得。
ただ、少し疑問に思う点もある。果たして本当に、子供たちがレジスタンストレーニングによって体をほぐせるのか? ということである。紹介されている学習指導案と同じことを、私は指導できるだろうかと考えると、答えは「NO」である。
子どもたちは目に見えるはっきりとしたフィードバックを欲する。重さとか距離とか回数とかタイムとか、そういうものだ。
「どこの筋肉が硬くなってる?」と問いかけても、子供たちのからは「オレ20回やったよ」などという反応が返ってきそうな気がする。
子どもの興味を自分の身体へと向けさせることは、かなり困難だ(少なくとも私にとっては)。
しかし、子供たちにとって後々の大きな財産となるのは、重さでも距離でも回数でもタイムでもなく、あとがきにもあるように「自分の体と対話できる能力」だ。
それを磨くため、私も日々未熟ながらも、手を変え品を変え「気づき」を促しているつもりである。
「レジスタンストレーニングによる体ほぐし」という組み合わせは万人向けではないかもしれないが、思い切って試してみる価値はあると思う。
(尾原 陽介)
出版元:ぎょうせい
(掲載日:2012-10-14)
タグ:子ども フィットネス 体ほぐし トレーニング
カテゴリ 運動実践
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ノルディックウォーキングのススメ
松谷 之義 日本健康スポーツ連盟
日本健康スポーツ連盟 相変わらずの健康ブームであり、運動ブームである。街を歩けば鮮やかなウェアのランナーたちとすれ違い、車を運転すれば颯爽と追い越していくのは自動車ではなくロードバイクだったりする。
1978 年以来の「国民健康づくり対策」によって日本は文字通り国を挙げて健康寿命(介護を必要とせず自立した生活ができる生存期間。日本は世界第一位)の延伸を図っており、とくにウォーキングやランニングといった持続性の高い(とされる)世間で言うところの有酸素運動が推奨されているのはよく知られている通りである。
が、これらを継続してもらうことはフィットネス指導の現場では意外に難しい。たとえば中高年の主婦層を指導対象とした場合、「お買い物で毎日歩いてるから大丈夫よ! ガハハハハ!」と、オバチャンならではの異様な自信と体格で(?)こちらの意図をガブリ寄り、運動の強度も頻度も不足してしまうという悲しい事態が発生したりするのだ(苦笑)。 さて、そこでノルディックウォーキングである。その名の通り北欧生まれのこのユニークなスポーツは、ここ数年、とくにフィットネスや生涯スポーツの分野で大きな広がりを見せており、2007年には国際ノルディックウォーキング協会公認の「日本ノルディックフィットネス協会」も設立されているそうである。
本書では、ストックを用いることにより通常のウォーキングよりも心拍数が24%上昇、身体活動強度は5.2METs相当、などのエビデンスだけでなくアウトドアで行えるグループプログラムとしての利点なども各地でのさまざまな活動報告とともに紹介されている。とくに、第2章でレポートされている高齢者の体力づくり教室やフィットネスクラブのプログラムとしての実践例などは、前述のような悩み(?)を抱える民間フィットネス指導者としても大変興味を惹くものである。
歴史がありフィットネス効果も高いスポーツということで、トップアスリートや芸能人が実践・宣伝すればマラソン同様、瞬く間にブームが巻き起こるかもしれない。文体も平易で読みやすいので「先物買い」ではないが(笑)、入門書として一読の価値ある一冊である。
(伊藤 謙治)
出版元:ぎょうせい
(掲載日:2012-10-16)
タグ:ノルディックウォーキング
カテゴリ 運動実践
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トリム家庭読本 こころとからだの健康づくり
武見 太郎 余暇開発センター
ブックハウス・エイチディ刊『ザ・スポーツメディスン・ブック』のなかでゲーブ・マーキン博士は「体力作りや試合に備えて体調をベストにするトレーニングは、健康、幸福、長寿のためのトレーニングと同一のものである」と述べている。『トリム家庭読本』と題された本書は、その名が示す通り一般家庭での健康作りをテーマとしているが、競技選手やその指導者が体力作りを考えるうえで大切なことがイラストや図表をふんだんに使って分かりやすく解説されている。たとえば、第2章の「持久力をつけよう」では、エアロビクス理論を中心にトレーニング時の望ましい心拍数(ターゲット・ゾーン)の説明や、第3章中の「トレーニング中のチェック」、第7章の「栄養のトリム」は、どのスポーツマンにも基礎知識として必要なものばかりである。「体力」を科学的にとらえ、効果的にその向上を考えるなら、基礎を正しく理解しておくことがそのスタートとなる。科学的となると難解な図表が並び、文章を読んでも専門的用語に満ちて、一般読者にはとっつきにくい傾向があるが、高度な内容がよく噛みくだかれているのが本書の特徴である。
こういう書を通じて、体力に関する正しい知識が家庭内に入っていくことは、とても大切なことであり、また望ましいことである。
武見太郎総合監修、(財)余暇開発センター編集
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ぎょうせい
(掲載日:1981-06-10)
タグ:運動処方
カテゴリ トレーニング
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女子スポーツ・ハンドブック
日本体育協会
「女性の時代」とか「女子どもの時代」といわれる。男女雇用機会均等法なるものも制定された。逆にいえば、男、大人、それを合わせた「大人の男」の影は薄い。あるいは、「大人の男」であることは難しい、または珍しい。男である書評子の私論がかなり露骨かもしれない。が、つまりは、女性のことを考える場合、それは逆に男性(どうもこの表現には抵抗がある。どうして男、女といった簡潔な表現が野卑なイメージを帯びるようになったのだろうか)のことも考えることになるということだ。話がそれたが、女性がテーマになりつつあるのはスポーツの世界も例外ではない。女性とスポーツに関する雑誌の特集はこれまでに何度も試みられてきたし、シンポジウムのテーマになったこともある。だが、わかりやすいガイド・ブックの類では、日本ではあまりみられなかったのが現実である。本書『女子スポーツ・ハンドブック』は、表紙も優しくスマートだが、内容もQ&A形式で親しみやすい。自分に関心のあるQの項を選び読むのもいいが、この分野に関わっている人、あるいは興味ある人なら、一通り読まれることをお勧めする。
構成は「主な目次」の項に示した通り、Qを①心理的・コーチング的側面、②運動生理的側面、③一般的・社会的側面に分け、①で30項目、②で52項目、③で16項目を収録している。そのそれぞれのQに対し、各専門家が答えるわけだが、本書発刊に至るまでの経緯を簡単に記すると次のようになる。
1900年 オリンピック・パリ大会でテニスとゴルフに女子選手が初参加
1912年 同ストックホルム大会で水泳が女子種目に加わる。
1928年 同アムステルダム大会に陸上競技、体操、フェンシングが女子種目に加わる。
1964年 同東京大会にバレーボールが女子種目に加わる。
1976年 同モントリオール大会にバスケットボールとハンドボールが登場。
1981年 日本体育協会競技力向上委員会で、国際競技力向上長期総合強化計画の一環として「女子スポーツ強化対策プロジェクト班」設置。依頼、スポーツ科学委員会女子スポーツ対策研究班、学識経験者の協力とともに、現場の指導者、選手の意見も採り入れ、各種検討がなされてきた。
こうして、女子スポーツの指導者、選手の参考書として、本書が刊行されたわけである。
編集委員は、嘉戸脩、小谷望、杉原隆、山川純の各氏。執筆者は、跡見順子、荒井貞光、石井源信、大野美沙子、海野孝、加賀谷淳子、嘉戸、金子正子、川原貴、今野和明、沢田和明、杉原、清和洋子、塚原千恵子、土ヶ淵竹志、荻原美代子、浜松ヨシ江、山田重雄、吉田敏明の各氏(姓のみは編集委員)。
一通り読み進んでいくと、私たちは「男だから」「女だから」と容易に短絡した物の見方、考え方をし、それが科学的根拠がないどころか、単なる偏見であることが多いのを知る。男性と女性では、心理的、運動生理的、社会的に何がどう違うのか、違うからどう対処しなければならないのか、まずこういった本で客観的に捉えておくことが大切だろう。女子の指導者が男子であることは珍しくない。選手に男女があるように、指導者にも男女がある。男対男、男対女、女対女の3つの組み合わせは、指導者対選手にも生じるわけだ。また、単なる男女差だけでなく、個人差もある。言語的な能力は女子のほうが優れていて、迷路や幾何学的な図形の分割や構成、二次元や三次元の空間判断などといった空間関係の理解・認知能力では女子は男子に劣るという比較的一貫した結果が得られている(P3より)とはいえ、それも個人差があり、「男だから」「女だから」と一概にいえないのは、日常生活を通じて誰もが知るところである。
これまで、スポーツといえば、多くは男子の参加するものであり、女子選手の参加、増加は比較的近年のことである。したがって、どうしても「男社会」的な要素が強かったスポーツだが、人間の半分は女子という明白な事実から、逆に女子とスポーツというテーマへの関心が高まっているといえるだろう。また、女子とともに、子どもとスポーツというのも近年関心の高まりつつあるテーマである。これも大人の男を中心にスポーツが語られてきたからとみることができるのではないだろうか。スポーツは老若男女のものであるから、老人とスポーツというテーマも今後急速にクローズ・アップされていくことだろう。その意味で、本書は決して特定の読者を対象とするのではなく、スポーツあるいは人間社会全体の問題を扱っている。
主な目次
〔心理的・コーチング的側面〕
Q1 知的能力や性格の面で、女子と男子にはどのような違いがありますか〜 Q30 思春期以前の女子選手のコーチングが心理的な面で、どのような配慮をすればよいですか
〔運動生理的側面〕
Q1 小学生からトレーニングを始めると、初潮に何か影響がありますか〜 Q52 運動あるいは試合の前の食事は何がよいですか
〔一般的・社会的側面〕
Q1 女子選手のスポーツ参加にはどのような特徴がみられますか〜 Q16 女子選手の一般的な練習時間と練習内容はどのようなものですか。また、その理想的な姿は
〔座談会〕
1985年11月東京国際女子マラソンを振り返って
(清家 輝文)
出版元:ぎょうせい
(掲載日:1986-06-10)
タグ:女性 指導
カテゴリ スポーツ医科学
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指定管理者制度ハンドブック
地域協働型マネジメント研究会
民間でできることは民間で
「あっ、それって小泉首相のキャッチフレーズでしょ、郵政民営化のときの」
「別に郵政に限らず、これからはいろいろな公共物が民間の手で管理されるようになるけどね」
「公共物!? たとえばどんなもの?」
「うん、たとえば河川とか道路とか、身近なところだと公園、福祉会館や健康センター、体育館や公民館などもそうなるな。昨年、そういった制度が整備されたんだよ」
「へぇー、なんでそうなるの?」
「結局、国に財政的余裕がなくなったことが一番でしょ。だから、余計な経費は削りたい。たとえば、施設のメンテナンス料や人件費などをさ。これらを民間にお願いしたいわけさ」
「とすると、そういった施設を民間に払い下げちゃうわけ?」
「いや、そうじゃない。管理を代行させるんだよ」
「管理の代行ね……。じゃ、今まで国や地方公共団体はどうやって管理してきたの?」
「直営で管理しているところもあるけど、だいたいは第三セクター方式といって民間と地方自治体の共同経営組織が管理をしてたんだ」
「それじゃ、だめなんだ」
「そういうこと。結局経営の見通しが甘すぎて、けっこう破綻する法人が増えてきているんだよ」
「また、国の借金が増えるってことか」
「だから、国は民間の資金とノウハウを積極的に活用していこうと考えるようになったわけだ」
NPOの活動拠点づくり
「でも、民間企業側には公共施設を管理・運営すると何かメリットあるのかな?」
「もちろんだよ。たとえば、公共スポーツ施設の中にはけっこう収益事業として成り立つような立地条件持っているところはたくさんあるんだ。でも、今までは行政の委託条件が窮屈だったり、行政が顧客の志向に基づいたサービスを怠ったりしたもんだから慢性的な赤字経営になってしまったんだな」
「ということは、公共の施設を使って商売できるわけだね」
「商売というよりは民間企業と地方公共団体が協働する、いわゆる公民パートナーシップを結ぶことで、企業側は住民へのコマーシャルやイメージづくりを期待できるし、行政側は住民の持つ多様なニーズに対してもっとも価値あるサービスを提供できることになるね。これは地域活性化にも効果がある。ちなみに、パートナーシップを結べるのは企業だけじゃない。うちのようなNPO法人もオーケーなんだ。この場合は活動拠点づくりにメリットがあるかな」
「そうなんだ。じゃあ、収益事業もできるんでしょう。企業と同じように。そうなると会の運営も楽になるんだけどな」
「大丈夫。利用料金制の導入によって、利用料は直接管理者の収入にできる。だからこそコスト面の効率化やサービスの向上が不可欠なわけ」
「なるほど、ビジネスチャンス到来っていうわけだ。だったら、さっそくうちでもそれやろうよ、その管理代行っていうやつ」
「正確には、指定管理者による公の施設の管理代行というんだ。誰が指定管理者になるかは公募プロポーザル方式によって決まるんだ」
「公募!? そんなの僕らにはやり方全然わからないよ。やっぱり、僕らのような市民団体には応募は無理だな」
「まあ、心配するなって。はい、これ。この本読めば公募のポイントも詳しく書いてあるし、実例も載っているんだ」
「へぇーこの本? 指定管理者制度ハンドブック……か」
(久米 秀作)
出版元:ぎょうせい
(掲載日:2004-12-10)
タグ:指定管理者
カテゴリ その他
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