メロスたちの夏
夜久 弘
マラソンを走る人は、精神力が強いのだと思っていた。ましてやウルトラマラソン(100㎞)である。しかし、どうもそうでもないらしい。
以下著者の言葉である。
「レース前にはトレーニング不足は精神力で乗り切ってみせる、と意気込み、本気でそう思っている。実際には疲れ切った身体の中からは精神力は湧き上がってはこない。精神力はトレーニングに比例して培われていくものなのだ。精神力が身体のどこかの引出しに別個にしまわれていて、いざというときに取り出して使うというシステムにはなっていない」
強い精神力は、当たり前だが努力した結果生まれる。そういえば、プロゴルファーの青木功さんは、「体・技・心」であると言う。まずは練習する体力をつくる。するとたくさん練習できるから、技術力が上がる。そして初めて、強い精神力がつくのだと。
トップアスリートもスポーツ愛好家でも、等しく流れているものがある。それは時間である。そして、時間のかかった分だけの、見返りの量も等しく流れているようである。
ウルトラマラソンからもらえる見返りを、著者はこう表現する。
「今日という1日は単独では存在しない。つらかったあの日、悲しかったあの日、努力したあの日の連なりの中にやってきた日なのだと」。いつでも、近くにおいておきたい言葉である。
(森下 茂)
出版元:ア-ルビ-ズ
(掲載日:2012-10-14)
タグ:ウルトラマラソン
カテゴリ エッセイ
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