症状から治療点をさぐる トリガーポイント
齋藤 昭彦
全身の筋別に見開き2ページで完結していて、オールカラーのため、たいへん見やすい。使い方としては、冒頭の「痛みから探すトリガーポイント」で、痛みが出ている部位と、その部位に痛みを起こす可能性のある筋を確認する。その後、個別の筋のページを開くと、まず、見開き左手ページの小見出しに、その筋のポイントが3点書かれている。たとえば腸腰筋だとこんな具合。
・大腰筋と腸骨筋で構成される筋肉の総称
・腰椎と大腿骨を結び、深部で体幹の屈曲や伸展に作用
・股関節の屈曲を過度に行うとTP(トリガーポイント)が発生しやすい
次に、解剖・生理・運動学的な説明が続き、その筋肉にTPを作ってしまうような原因、傾向、さらには注意点が記載されている。腸腰筋の注意点は「腰仙部の機能障害や虫垂炎などほかの疾患と誤診しないよう注意を要します。腰方形筋、梨状筋、中殿筋、大殿筋、縫工筋など、ほかの部位のTPの関連痛パターンとの区別も必要です。」とある。
左手のページ右側にはメモ、キーワード、などがあり、用語の確認などの役に立ち、その筋にまつわる豆知識が得られる。右手のページにはカラーのわかりやすい図と、丁寧に手技の方法まで書いてある筋もある。とくに周りの筋との関係がわかるように他の筋が透かしになっている点が個人的にはありがたい。ただ個別のページにその筋の関連痛の図示などがあればもっとありがたかった。
通読するというより、気になったときに辞典のように参照するのがいいと思う。P25には「症状から予測されるトリガーポイントの部位」と題し、息切れ・咳・下痢・顎関節症・歯痛、etc. さまざまな症状が列挙されていて参考になる。もちろんTPだけで全て説明できるものではないが(この本でも注意点として、他疾患と鑑別することを促している)、軟部組織のトラブルをみる上で、優れたパターニング方法であることは間違いない。
(塩﨑 由規)
出版元:マイナビ出版
(掲載日:2022-04-04)
タグ:トリガーポイント
カテゴリ 身体
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一生、山に登るための体づくり
石田 良恵
私には、スポーツや運動といえば若い人がやるものという思い込みが以前ありました。しかし自分が高齢者のくくりに入ってしまったら「若者の特権」という意識は薄れてきました。スポーツを楽しむのは各々の体力に応じてできるのであって、それぞれのスポーツもすそ野が広い方が盛り上がるわけですから好ましいといえます。ところがケガなどのリスクは極力避ける努力をしないと後々つらい思いをすることになりますので、正しい知識を持って楽しくやるべきだと思います。
私の周りにも山歩きが好きな人が多くいます。自然とともに体を動かすことの喜びや楽しみは愛好家にとってかけがえのないことのようです。ところが魅力であるはずの自然は時として脅威として襲い掛かることもあり、場合によっては命に関わるケースもあり、ニュースで報じられることも少なくないのが現実です。
本書の良さは筆者の経験と研究から登山のリスクと向き合いそのために必要な体作りをわかりやすく指導されているところにあります。「一生、山に登る」というタイトルの通り、体力に不安がある高齢者にもできるというのが中心的なテーマになるのですが、体づくりの必要性を理解するところから本書は始まり、体力の下地ともいうべき体の安定性を身につけるための柔軟な体づくりをすることへと続きます。我々にすれば一にも二にも筋力をつけてと考えがちですが、筋力の前提条件からスタートするあたりは研究者の面目躍如といったところでしょうか。
体力(筋力)づくりも、基本編と、登山の特性を説明したうえでの実用編と段階を踏んでいます。そこから登山に欠かせない持久力。さらには水分補給や筋肉をつくるための栄養素の話まで登山のすべてがこの一冊に網羅されているのではないかと思うほどでした。もちろんトップレベルの登山は別として、一般人が自分の楽しみとして行う登山としては十分な内容だと思います。
高齢者の割合が高くなりつつあるわが国でどうやって健康を維持し、長く健全な生活を送れるかが社会問題となっています。とはいえやみくもに運動をしても危険なこともあります。本書で紹介されているトレーニングなどの情報は山に登らなくてもやっておきたいことばかり。高齢になっても健やかに過ごしたい人にはお読みいただきたい本です。そこから逆に山に興味を持ってもいいんじゃないでしょうか。
(辻田 浩志)
出版元:マイナビ出版
(掲載日:2023-03-20)
タグ:登山
カテゴリ 運動実践
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運動・からだ図解 運動器・整形外科の基本
石井 賢
試験勉強をするにあたって2つの要素があると考えています。それは「覚えること」と「整理すること」です。やみくもに暗記しても覚えた知識をどこでどう使っていいのかがわからなければ、使い道がわからない知識だけが増えるだけで効率が著しく悪くなります。洋服でも夏物・冬物、インナー・アウター、トップス・パンツなど整理して収納されていると組み合わせが想像しやすいはずです。
ブックレビューの冒頭にふさわしくない文章かもしれませんが、本書をめくると筆者の言葉として「医療従事者の皆さんにとって、整形外科の基礎を短期間で学ぶための導入書」であるとされ、中を読んでいくと注釈に「試験に出る語句」や「キーワード」という項目があります。察するに本書は国家試験の勉強をより確かなものにするための参考書としての役割を意識して執筆されたのではないでしょうか。それぞれの国試において覚えておかなければいけない項目は膨大な量でしょうが、それらをコンパクトに整理されているのが本書の特徴だと言えそうです。詳しい解説は他の書籍に任せて本書は「知識の整理」が目的であると感じました。
特筆すべきは整理の仕方。解剖学的な見地からの解説、整形外科疾患及び治療法からの解説、部位ごとの疾患とそれぞれの区分がとても分かりやすいので、引き出しをしっかり分けた上での構成になっていますので読む側の頭の中での整理もしやすくなっていると感じました。
ひと通り読んでみて私自身しっかりと把握できていない箇所も少なくないことに気づきました。何となく覚えたつもりでも抜け落ちている箇所を認識できるのは受験生にとってはありがたいことかもしれません。本書は整形外科という絞られたジャンルではありますが、本書のような手法で全体を整理しなおすことも可能かもしれません。
もちろん受験生だけではなく現場で活躍されている方にも過去に勉強した知識がどうなっているかを確認できます。多くの方に価値のある一冊になりそうです。
(辻田 浩志)
出版元:マイナビ出版
(掲載日:2025-03-10)
タグ:整形外科
カテゴリ 医学
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運動・からだ図解 運動器・整形外科の基本
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