器質か心因か
尾久 守侑
精神科専門医で内科での勤務もしている著者が実際に診てきた症例を交えながら「器質か心因か」つまり「身体の病気かそうでないか」について考える一冊。
検査しても異常がないのに症状がある、というのはよく耳にするが、症状というものは思っていた以上に「器質」と「心因」が絶妙に絡み合って出現している。この本では器質か心因かを見分ける方法ではなく、実際の症例も交え、どのように見立て、治療につなげていくかが述べられている。
一般的には、身体疾患ではない→心理的なものが原因→精神科マターとなるが、そのほとんどが単純なものではなく、
・患者のもともとの「脆弱性」+「身体因」の脳への侵襲+心因
という方程式にあてはめ、その先の対応を組み立てていく必要がある。「脳器質因があると心因反応がよりおこりやすくなる心理的加重や慢性化すると方程式に当てはめられない」など、鍼灸の臨床の際にも頭に入れておきたいことが多く書かれている。
「病院で何ともないと言われた」は鍼灸院でよく聞くセリフである。しかし、本人の自覚症状はあり、その場合の対応について非常に考えさせられた。医師向けの本ではありますが、医療者や一般の方も「検査しても何もない」がどういうことなのか知るために、読んでほしい一冊。
(山口 玲奈)
出版元:中外医学社
(掲載日:2022-10-08)
タグ:心因反応
カテゴリ 医学
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