にんげん見本帖
西川 右近
筆者西川右近氏は日本舞踊家で名古屋西川流の家元。本書は筆者の交友録でもあり、関わった人々により成長していく過程を記した自叙伝とも言えます。「人は影響されつつ影響する」ドイツの学者の言葉だったように記憶していますが、人は生まれて大勢の人に出会い、たくさんのことを学びます。その積み重ねによりひとりの人間としての人格を形成していくといった意味ですが、ここに登場する人物との出会いとそれぞれのエピソードが西川右近という人間を育てたんだよ、そう言いたげな内容だと感じました。そして多くの個性的な人物との関わり合いこそが舞踊家として「今」をつくり上げた感謝の念から書かれた作品のようです。
こういった世界では一般人の感覚とは違います。住む世界が違うといったほうがより正確でしょう。ここに登場する人物ひとりひとりが普通はお目にかかることのないお方ばかり、常識はずれというか破天荒というかスケールの大きさを痛感するとともに、それぞれの登場人物がひとりずつ物語になりそうなお方ばかり。こんな人の中で育ったらどんな人間になるのだろうと、たじろぎそうになるほどの面々。それだけにエピソードは魅力がたっぷり。芸の世界に生きる人々の遊び心・心意気・駆け引き・粋…。豪快で愉快な人間模様がリアルに描かれています。
(辻田 浩志)
出版元:創美社
(掲載日:2013-11-19)
タグ:舞踊
カテゴリ 人生
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