スキー技術の真実 理想的なターンを科学する
鈴木 聡一郎
本書はそのタイトルの通り技術解説ではありますが、科学的な観点から技術の意味や必要性を分析したものです。私は三十数年前にレジャーとして何度か行ったことがある程度のスキー初心者でした。そんな私が読んでも本書の解説は難しい理論ではなく、ごく初歩の物理学的な解説なので驚くほど理解しやすい内容でした。
本書を読んで思ったのは、他のスポーツと比較して決定的な違いは、スキーは初めから持っている位置エネルギーを利用して高いところから低いところに移動する際、いかにして位置エネルギーのロスを少なくするかというスポーツであることです。他のスポーツは0から出力を上げていくのが普通なんですが、まるで正反対の性質が浮き彫りになります。その上で技術や力はエネルギーのロスを防ぐためのものである点が理解できました。
本書を読むとスキーの技術が物理学的な効率のよさを追求しているのがわかり、読めば読むほど他のスポーツからの特殊性が印象に残ります。しかし読み終えてみればエネルギー伝達の効率の問題はなにもスキーに限ったことではないと考えるようになりました。一つ一つの技術の解説ではスキーが他のスポーツとは違うイメージがありましたが、全体を通じて言えばエネルギー効率の大切さは他のスポーツも同じであり、本書のような視点でスキー以外のスポーツを考察してみても面白いと感じました。
スキーヤーにとって必読書の一冊といいたいのですが、むしろ他のスポーツに関わる人たちが本書をお読みになったら、また違った視点で見られるのではないでしょうか。
(辻田 浩志)
出版元:合同出版
(掲載日:2023-02-08)
タグ:スキー
カテゴリ 運動実践
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