名波 浩 泥まみれのナンバー10
平山 譲
名波浩、静岡県藤枝市出身のサッカー選手、ポジションはミッドフィールダー。Jリーグのジュビロ磐田、セレッソ大阪、東京ヴェルディ、イタリア・セリエAのACヴェネツィアでプレーし、Jリーグベストイレブンを4度受賞している。日本代表としても、背番号10を背負い、1998年のフランスW杯に出場した経験を持つ。
この本は、彼の幼少期からフランスW杯までの歩みを、本人だけでなく両親や少年団、中学校、高校の恩師をはじめ、多くの人のインタビューをもとに描いている。小さい頃から本当にサッカーが好きで、サッカーにかける思い、努力は人一倍だった。そんな彼がチーム全体を見渡し、自分の能力を考えて解釈した自分の役割はアシスタント。「僕自身が目立たなくてもいいんです。自分のことを人を輝かせるためにプレーヤーだと思っていますから」その役割を果たすための徹底ぶりは、筆者が書いた各試合のレビューを読んでもわかる。
本の後半に出てくるW杯予選は、彼にとって非常に大きな試練だった。強行スケジュール、10番というプレッシャー、マスコミからのストレスが重なり、疲弊してサッカーを楽しむことができなくなっていた。そのとき、学生時代の恩師が名波選手に送ったファックスには、「人生の最高の時、苦しい時、厳しい時。力を発揮できるのが日本男児。正面から戦え。自分を信じて、仲間を信じて」と力強く書いてあったという。見てくれる人は見てくれている。そのような存在が、彼が人生を進む上でかけがえのない支えとなったに違いない。
仲間を支えることに楽しみを感じた彼のサッカー人生。与えることに全力を尽くしたからこそ、自然と周りからも与えられる。プロフェッショナルとはそういう存在なのだろうと、この本を読んで感じた。
(服部 紗都子)
出版元:TOKYO FM出版
(掲載日:2012-11-28)
タグ:サッカー
カテゴリ 人生
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