小山台高校野球班の記録
藤井 利香
「やっぱり小山台高校が東京代表として甲子園に出るのは厳しかったのではないか?」
小山台高校が出場した選抜高校野球大会で、履正社高校に0-11で負けたときの私の正直な感想でした。小山台高校は、私がサポートするチームがしばしばオープン戦を行うこともある学校です。身近に感じて応援していたチームでしたが、ついついそのように感じてしまいました。
この本を読んで内情を知ると、印象はガラッと変わりました。選手・スタッフ・関係者の皆さまが野球だけではなく、さまざまなことと戦っていたことがよくわかりました。過去最低と評されていた代で、選手たちのノートにも秋のベスト8の時点で選抜を諦める言葉も出ていたとのこと。
それでも福嶋先生は選抜出場を視野に入れて「21世紀枠にふさわしいチームになろう」と口にされていたそうです。生活や学習態度なども含めて、周囲から選ばれるべくして選ばれたと認めてもらえる行動を心がけていたようです。このような取り組みも、選抜出場を引き寄せた要因なのではないでしょうか?
選抜出場が決まってからは、試合の前までもバタバタと大変だったようです。試合もあっという間の1安打完封負け。4番の選手の「打てないんじゃなく、むしろ打てる気がしていたんです。点差ほどボロボロにやられたイメージはないのに11点も入ってる。気づいたら取られていた、そんな試合でした」という言葉が、甲子園独特の雰囲気を表しているように思えました。その他、2章の最後に書かれていた選手たちの言葉は、甲子園を経験したからこその重みを感じました。
そして、夏に向けても選手はもちろん、スタッフにかかる重圧も相当大きかったようです。甲子園の舞台に立ったことで「レベルが勝手に引き上げられた気がする」という語った選手もいたようです。本人たちが感じているのと同時に、周りの見る目のレベルも引き上げられており、それがプレッシャーになっていたのではないでしょうか。
最後に、サブタイトルになっている「エブリデイ イズ マイ ラスト」のエピソードには涙が出そうでした。
甲子園に出場するという重みが、これほどまでに身近に伝わってくる藤井さんの表現も、あっという間に本を読み終えた要因の1つでした。自分もその場にいるかのように感じられました。高校野球に携わる身としては、非常に刺激になる一冊でした。
(塩多 雅矢)
出版元: 日刊スポーツ出版社
(掲載日:2017-02-06)
タグ:高校野球
カテゴリ スポーツライティング
CiNii Booksで検索:小山台高校野球班の記録
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:小山台高校野球班の記録
e-hon
戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼
柏井 正樹 島沢 優子
錦織圭選手がジュニア期に指導をされていた柏井正樹さんの著書でした。錦織圭選手のことが実例として書かれることが多かったので、説得力がありました。錦織選手のジュニア期は、相手のプレースタイルに付き合って試合を運び、相手が痺れを切らせてプレースタイルを変えてきたところで一気に切り崩していたそうです。柏井氏は、負けた選手が自分流を続けることができたら錦織選手に勝てる可能性があったかもしれないけど、自分がやっていることを信じきれていないので違うことをしてしまう、と表現しておりました。
自分がやっていることを信じるというのは、簡単なようで難しいことなんですね。トップクラスの試合での出来事というのが、その難しさを物語っていますね。私のサポートチームにも、格上のチームと試合をする際にも、自分たちの方針を揺るがさずに試合を運べるようになってもらいたいものです。
本書の中では心に響く表現がサラッと書かれていて、それがまた面白かったです。「試合で頑張らない人はいないので、それは試合で頑張らなかったのではなく、試合までの準備を頑張っていなかった」という表現には、深く納得しました。参考になるポイントが多々ありましたが、指導で使う声のトーンの使い分けが、実践する上で一番わかりやすかったです。これは心がけていきます。「戦略的な思考は、ゆとりのある自由な空気感から生まれる」という柏井氏の言葉通り、選手の能力を存分に引き出そうとする指導スタイルから、素敵な刺激をいただくことができました。
(塩多 雅矢)
出版元:大修館書店
(掲載日:2017-04-06)
タグ:テニス 戦略
カテゴリ 指導
CiNii Booksで検索:戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼
e-hon