徒手的理学療法
藤縄 理
徒手的理学療法とは、理学療法の一部として行われている徒手療法をいいます。徒手療法は徒手を用いた治療方法で、神経筋骨格系の機能異常を評価し治療する体系的な方法です。
徒手的理学療法の具体的な手技を表す用語として、マニピュレーション、モビライゼーション、マッサージなどがあります。しかしこれらの用語はさまざまな意味で使われており、治療現場においても統一されていないのが現状です。 「物事の本質を知るためには、その歴史を知る必要がある」といわれます。本書では、はじめに徒手療法の歴史と現在の体系に至った経緯を示した上で、それぞれの用語について説明しています。そのため曖昧に使用されることが多い用語について、整理して理解することができます。
また評価・治療手技に必要な最低限の解剖学・骨運動学・関節運動学・運動器障害の病態生理学などが紹介されていますが、本書に述べられている知識だけで十分というわけではありません。しかし多くの参考文献が紹介されており、これらの情報をもとに知識を深めていくこともできます。さらに評価・治療手技の方法については多くの写真やDVDの映像とともに解説されているので、徒手的理学療法を学ぶ上での導入書として活用できると思います。
私は、治療を行っていく上でセラピストへの依存をつくらず、自立した生活へと送り出していくことが重要と考えています。そのためには、患者自身が身体に興味を抱き、積極的に治療に参加しているという自覚を持っていただくことが大切です。本書のなかには「自己治療」として患者自身ができる方法も紹介されており、参考になると思います。また障害の予防にはセルフコンディショニングが重要とされています。これらの情報を適切に提供していくことで、中高生の選手の障害予防や選手教育にも役立つのではないでしょうか。
(山際 政弘)
出版元:三輪書店
(掲載日:2012-10-16)
タグ:理学療法 徒手療法 評価
カテゴリ スポーツ医科学
CiNii Booksで検索:徒手的理学療法
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:徒手的理学療法
e-hon
高齢者の転倒 病院や施設での予防と看護・介護
Rein Tideiksaar 林 泰史
「転倒が高齢者の幸せを奪う病気の中心的なものの一つである」。高齢者のなかには、転倒によって人生(生活)の質の低下を余儀なくされている人が多くいます。現在、病院や介護施設だけでなく地域社会においても多くの転倒予防対策が講じられています。本書はRein Tideiksaarによる『Falls in Older Persons Prevention & Management』を日本の各施設が転倒予防対策を行う上での参考図書にと訳されたものです。
第1章では、転倒の影響について、転倒した本人に関すること、その家族からの視点、施設側からの視点に分けて述べられています。家族がどのように感じているのかという部分について書いているものは少なく、とても参考になりました。また施設のスタッフがどのように感じているのかと点については共感できる部分が多くありました。
第2章では転倒の原因と危険性について内的要因と外的要因に分け、詳しく説明されています。そのため、リハビリテーションを学ぶ学生にとっても転倒ということを知る上で参考になると思います。
第3章、第4章では臨床現場での評価や予防策について、転倒歴の記録内容(SPLATT)や行為・状況別動作遂行能力検査(POEMS)などを例にあげながら述べられています。第5章では環境整備について多くのイラストとともに紹介されています。
本書は日々の臨床と照らし合わせながら読むことができるため、新たな気づきを与えてくれる一冊だと思います。
(山際 政弘)
出版元:メディカ出版
(掲載日:2012-10-16)
タグ:転倒予防
カテゴリ 指導
CiNii Booksで検索:高齢者の転倒 病院や施設での予防と看護・介護
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:高齢者の転倒 病院や施設での予防と看護・介護
e-hon
医の倫理と法
森岡 恭彦
倫理とは何か? 簡単にいうと「人の行うべき正しい道」ということで、「道徳」と同義で用いられることも多くあります。
「倫理」は文化や宗教、国家のイデオロギーによってその捉え方は異なることがあります。そのため本書では、「医師の職業倫理」「終末期患者の医療」「生殖医療の倫理的問題」「医学研究の倫理」について他国の動向や日本の歴史的・文化的背景を踏まえて、今の日本の法律や現状について解説されています。
第二章の「医師の職業倫理」では、インフォームドコンセントを中心に日常業務における医師の責務、医師や医療機関の法律上の責務について述べられています。
第三章の「終末期患者の医療」では、安楽死や尊厳死、臓器提供の問題について海外での判例や日本の現状について説明されています。
第四章の「生殖医療の倫理的問題」、第五章の「医学的研究」では急激な科学技術の変化によって生まれてきた問題について法律的・倫理的側面から問題提起がされています。
本書は、一般の医学生や看護師などの医療従事者の人たちが知っておくべき「医の倫理」についての基本的事項をわかりやすく解説してます。しかし身体に関わる職種の方々にとっても「倫理」を今一度考え直す良い機会になるのではないだろうか。
(山際 政弘)
出版元:南江堂
(掲載日:2012-10-16)
タグ:倫理
カテゴリ 医学
CiNii Booksで検索:医の倫理と法
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:医の倫理と法
e-hon