選手の膝をケガから守る チームで取り組む傷害予防トレーニング
大見 頼一
本書は『月刊トレーニング・ジャーナル』2012年9月号~2013年10月号に「膝の傷害予防トレーニング」として連載されたものを加筆・修正し、再編集したものである。編著者である大見先生は前十字靭帯(ACL)損傷予防トレーニングの先駆けである日本鋼管病院の栗山節郎先生の元で働いている理学療法士であり、現在は日本鋼管病院のスタッフだけでなく活動に賛同する有志で結成したスポーツ傷害予防チームを組んで神奈川県の高校バスケットボールチームを中心に活動している。
本の内容は、膝の解剖、ACLの詳細、予防プログラム、プログラムを指導する上でのポイント、職場の違うスタッフがチームを組んで行う際のメリットとデメリットについて記載されている。
ACL損傷プログラムを状況やレベルに応じて段階的に分けており、現場で実施しやすい内容になっているのがこの本の魅力的な点である。また、ACL損傷プログラムを状況やレベルに応じて段階的に分けており、とても分かりやすいため、誰もが見てすぐに実施できるのが魅力とも言える。ACL損傷が起こりやすいバスケットボール、ハンドボールなどの競技にとっては常備本として活用することができるのではないだろうか。
ACLだけでなく外傷で最も多いと言われている足関節靭帯損傷についての傷害予防トレーニングも記載しており、こちらも現場で導入しやすい内容になっている。現場で指導しているトレーナーや理学療法士にとってみてもこの予防トレーニングは、スポーツ傷害予防チームが自分たちで実施してきたものを効果があるか検証しているため、取り入れやすいのではないだろうか。
最後には競技現場でトレーナーとして介入する際に出てくる問題点や、ACL損傷予防プログラムを現場にどう落とし込んでいったかといった情報も記載しているため、同様な悩みや問題点を抱えている方々にこの本を読んでウォーミングアップやコンディションニングのツールとして導入していただければよいと思う。
(鈴木 健大)
出版元:ブックハウス・エイチディ
(掲載日:2014-12-03)
タグ:予防 トレーニング ACL損傷
カテゴリ トレーニング
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スポーツ・インテリジェンス オリンピックの勝敗は情報戦で決まる
和久 貴洋
本書は、日本オリンピック委員会(以下JOC)情報・医・科学専門部会委員である和久先生が、オリンピックで成績を上げるためには情報戦略がいかに重要かということについて述べている。
ここ近年、オリンピックにおける日本人メダリストが少ない理由として、中国・韓国人メダリストと比べ20~24歳の選手が台頭していないこと、また世界ランク8位以内の選手が少ないことを挙げている。あらゆるデータを基に解析して、諸外国と比較した結果から、原因を推測し、情報を国や競技団体にフィードバックして競技成績につなげていくという情報戦略である。実際にはこれだけでなく、海外からの有益なスポーツ医科学情報をいち早くキャッチすることが重要である。
スポーツ医科学に関する情報は諸外国を見ても、シークレットな部分であり、多くはオリンピックのプレ大会で発表されることが多いが、その時点で情報を得たところでもう遅い。普段あまり表に出ないシークレットな情報を入手するコツが記載されている。
たとえば、2012年ロンドンオリンピックで有名になったマルチサポートハウス。この存在が日本選手団から多くのメダリストを誕生させるきっかけになったと言っても過言ではない。そのマルチサポートハウスの計画は2004年のアテネオリンピックで、アメリカが実施したという情報からスタートしており、ロンドンオリンピックで日本選手団独自のマルチサポートハウスを実現させるための過程が記載されている。
リオデジャネイロオリンピック、東京オリンピックに向けて日本人メダリストを多く誕生させるためには、この情報戦略がキーであることを本書を読むと理解できる。
(鈴木 健大)
出版元:NHK出版
(掲載日:2015-05-29)
タグ:情報戦略
カテゴリ その他
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見るみるわかる肩甲ナビ
竹内 京子 宮崎 尚子
本書は、肩関節の解剖をとてもわかりやすく紹介している。とくに筋肉を説明している図が立体的であり見やすいため、起始・停止部の理解にもつながりやすい。また、関節の動きも詳細について説明している。
健康ブームということもあり、専門家のみならず一般の人も身体について興味がある現在、一般の人が見てもわかりやすい内容となっている。
内容としては肩関節の解剖だけに留まらず、肩の動き、よくある肩の悩みや不調、肩のタイプとチェック方法、タイプ別エクササイズ、肩の機能改善エクササイズがあり、評価とトレーニングも網羅している。
肩のことを知りたい方、肩に悩みのある方、肩を酷使する方にはお勧めの一冊です。
(鈴木 健大)
出版元:ラウンドフラット
(掲載日:2016-04-22)
タグ:肩甲骨 エクササイズ
カテゴリ スポーツ医科学
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もっと投げたくはないか 権藤博からのメッセージ
権藤 博
本書は、中日ドラゴンズに入団し、沢村賞、新人賞など現役時代に数々のタイトルを総ナメにしたが、肩のケガにより引退を与儀なくされ、コーチとして中日ドラゴンズ、近鉄バッファローズ、そして監督として横浜ベイスターズを日本一に導いた権藤氏の生涯を自伝としてまとめたものである。
権藤氏が現役を引退してから監督・コーチとして活躍するきっかけは、中日ドラゴンズで現役として活躍していたときに出会ったメジャーリーガーからかけられた言葉である。後にそれがきっかけで、メジャーリーグを視察するようになった。実際に視察をしたところ、日本とは違う現状を目の当たりにした。その1つの例がコーチングである。アメリカでは「教えてすぎてはいけない」という指導スタイルであり、それが選手に気づきを与え自分の身体で覚えることにつながるという教えである。それまで権藤氏は技術指導をしていたが、それは選手のためにならないと言われ、そのときにハッとしたという。それが現在のコーチングに活きていると記載されている。
権藤氏の性格はとても情熱的で、野球が誰もよりも好き、芯がある性格で、プロフェッショナルである。この本を読むことで仕事に対する姿勢やプロフェッショナルとは何かを考えさせられた。とくに歌手の松山千春氏との対談では熱い野球談議に花を咲かせながら、仕事観について語り合っており、とても勉強になる。
コーチングについて、また仕事に対する取り組みについて興味を持っている人にはお勧めしたい一冊だ。
(鈴木 健大)
出版元:日刊スポーツ出版社
(掲載日:2016-05-28)
タグ:野球 コーチング
カテゴリ 指導
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ムーブメントスキルを高める これなら伝わる、動きづくりのトレーニング
朝倉 全紀 勝原 竜太
最近、ムーブメントという言葉を目にする機会が多い。トレーニングするのは筋肉など各能力要素だけでなくムーブメントという複合的要素へのアプローチを行い、パフォーマンス向上へつなげていく。
この本は、ムーブメントスキルに焦点をおいて物理学などを駆使して解説している。物理学と聞くと難しい印象を持つが、実際に読んでみると、ムーブメントスキルという言葉から始まり、「ニュートン力学」「地面反力」「リニアムーブメント」「アジリティー」「筋力」という言葉の概念を簡潔にまとめている。
ムーブメントスキルとは、「走る」「跳ぶ」「投げる」「蹴る」などの基本動作をここでは指す。そのスキルをどのように獲得していくか、またどのように運用していくかなども解説している。そのため、動きづくりに悩んでいる選手、指導者、トレーナーを志している学生にはぜひ本書を読んでいただき、各能力の要素を理解しながら、ムーブメントドリルを作成するとさらに効果のあるトレーニングプログラムを作成できるのではと考える。
対談では、ムーブメントスキルを見る目を持つことの重要性を述べている。私もこれについては著者の意見と同感である。科学的なデータから分析することも重要だが、その場での実際の動きを見て判断することがスポーツ現場で求められる。
経験豊富なストレングスコーチが実際のスポーツ現場で得た主観的な感覚とスポーツ科学から客観的な視野が融合した一冊である。
(鈴木 健大)
出版元:ブックハウス・エイチディ
(掲載日:2016-07-14)
タグ:指導 トレーニング
カテゴリ トレーニング
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一流選手になるためのスポーツビジョントレーニング
石垣 尚男
本書は最近世間で注目を浴びているスポーツビジョントレーニングをわかりやすく説明している。
脳の半分は視覚情報の処理していることを考えると眼はから得た視覚情報は、とても重要であり、トップスポーツ選手になるほど、瞬間視と言われる要素が長けている。とくに、球技スポーツにおいてはスキル要素と密接に関わっていることを考えると、子どもの頃からスポーツビジョントレーニングを実施する必要性が十分理解できる。
状況判断能力を高めたい、ボールをしっかり最後まで見ることができるようになりたい選手だけでなく、指導者やスポーツ現場のトレーナーの方々にもぜひお勧めしたい一冊である。
(鈴木 健大)
出版元:講談社
(掲載日:2016-08-13)
タグ:スポーツビジョン
カテゴリ トレーニング
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