ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
免疫・「自己」と「非自己」の科学
多田 富雄
『免疫の意味論』『生命の意味論』で知られる著者のNHKブックスの1冊。
能にも通じる著者は最近『脳の中の能舞台」(新潮社)という本も出しているが、本書は『免疫の意味論』をかみくだいた書とも言える。
1998年春に放映されたNHK教育テレビ「人間大学」での12回の講義がべ一スになり、大幅な加筆改訂に3年を費やして完成。
「『人間大学』は、一般の市民の方に学問や文化の現在をわかりすくお話しするというのが目的である。お引き受けしたとき私は、長年研究してきた免疫学なのだから、高校卒業ていどの若者や、文科系の人たちにも充分わからせることができるという自信を持っていたが、放送が始まってみたら、そうはいかなかった」(あとがきより)と記し、著者はこの反省から、学生やパラメディカル、生命科学に興味を持つ文科系の学生に必要で充分な免疫学の基礎知識を伝えることができる本になったと言う。
とは言え、免疫はそう簡単ではない。細かなところはわからなくても、いかに複雑で多様な系であるかがわかるだけでも見方が変わる。インフルエンザにかかって、治るまでを免疫学的に解説したところなどは、今度かかったらじっくり観察し、ヘタなことはしないでおこうと思わせる。生命のすごさ、それを発見してきた人間のすごさを知ることができる。
(月刊スポーツメディスン編集部)
カテゴリ:生命科学
タグ:免疫
出版元:日本放送出版協会
掲載日:2001-11-25