ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
フェルデンクライス・メソッド入門 力みを手放す、体の学習法
伊賀 英樹
本書によるとフェルデンクライスメソッドは、(1)環境の中で自分自身の機能的な気づきを発展させる学習システム、(2)人々に働きかけて、その人々の動きの能力の範囲を拡げ、気づきを高め、機能を改善させ、自分自身をもっと十分に表現することを可能にする、(3)自分自身全体を組織化し、忘れられた動きのパターンや行動を取り戻すために必要な学習をどのように促進するかという問題に対して直接的に向けられているものである、と定義されている。
つまり、フェルデンクライスメソッドは「自分自身の体への認識を深め、機能と動きを再教育するための学習法」である。そのため、一般的な医療行為のように、症状を治したり改善させることが直接の目的ではない。
フェルデンクライスメソッドのレッスンはグループで行うATMレッスンと、個人で受けるFIレッスンの2つからなる。
ATMレッスンは“Awareness through Movement(=動きを通じての気づき)”、FIレッスンは“Functional Integration(=機能の統合)”を意味する。
いずれも大きな動きや大きな力は必要とされず、ゆっくりと穏やかな動きで自分の身体の内部感覚と今までの習慣になっていた動きの癖を見直し、より楽で自然な身体の使い方に向けていく。ただし、ここにも正解はなく、動きを通じての気づきと学習の仕方を学ぶのが目的になる。
私もどうしても力んでしまう選手や患者に接することがある。彼らに「力を抜いて」「リラックスして」と声をかけても、自分の意志で入れている力ではないので当然、自分の意志では力を抜くことはできない。これは、スポーツやリハビリテーションに限らず、さまざまな場面であることだろうし、おそらく多くの人も経験があるはずだ。
私も実際の効果のない指摘するだけの言葉ではなく、無意識の緊張を緩めるための手法の必要性を痛感している。フェルデンクライスメソッドにはその可能性を感じるので、これからも関心を持っていきたい。
(西澤 隆)
カテゴリ:指導
タグ:フェルデンクライス ボディーワーク
出版元:BABジャパン
掲載日:2013-12-12