ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
なぜナイスショットは練習場でしか出ないのか 本番に強いゴルフの心理学
市村 操一
ゴルフを上達させるためのメンタルトレーニングを、トッププロ選手の事例や様々な論文をもとにして描いている。「集中力の妨害には『ルーティン化した準備運動』で対処せよ」の章では、ゴルフだけに限らず、私たちの日常生活やビジネスの場面でも同じことが言える。一日の中で集中力阻害要因は山のようにある。選択肢が多くなり、さまざまなことが便利になった分、集中して物事に取り組むのが非常に難しくなってきた。一流選手が試合に臨む過程で、決まったルーティンを持つように、私たちも日常生活やビジネスの場面でハイパフォーマンスを発揮していくためには、ある程度の決まったルーティンを持つ必要があると常々考えている。
ゴルフの上級者と初心者の違いに関しての考察も示唆に富んでおり、プロゴルファーやゴルフの心理学者の多くが指摘する上級者と初心者の違いには、「注意の向け方の違い」があるようである。上級者の注意の向け方は、目標を狭く絞っている。それに対して、初心者の注意はスイングのメカニズムや、力を入れて打つこと、そして池、立ち木、ブッシュやバンカーなどのハザードなどなど多方面に広がっている。もう1つの違いは、上級者の注意がこれから実行することに向けられるのに対して、初心者の注意は避けようとすることに向けられる。1つのことに集中して物事に取り組むこと、さらにその集中する状態や環境をつくることがゴルフのパフォーマンスアップのために必要なことなのであろう。
戦う人はいい顔をしなさい、心を平静に保つための「姿勢や表情」も練習せよ、変化を嫌う人は進歩しないなど、ゴルフのパフォーマンスを上げることと、日常生活をよりよいものにしていくことは共通項が非常に多いのではないか、と本書を通じて思ったところである。
(浦中 宏典)
カテゴリ:スポーツ医科学
タグ:心理学 ゴルフ
出版元:幻冬舎
掲載日:2013-12-20