ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
隠居学 おもしろくてたまらないヒマつぶし
加藤 秀俊
「脈略のなさ」それが本書の真骨頂なんでしょう。興味深い話題が延々と続くわけですが、それら1つひとつにつながりはありません。なんとなれば隠居にはこれをやらなければいけないという目的がないからです。
「現役」にはそれぞれすべきことがあります。現役を退いた隠居という立場においてはそういった義務的な縛りがありません。だからこそ思い浮かぶままに好きなことを考えられるし、他愛もない事柄に興じることもできるのでしょう。
それでも、今まで人類が築き上げてきた科学的知識の一片一片は思いつきから始まり、それらが連鎖して人類の財産とも言える知識に膨れ上がったのであるという主張に、筆者の隠された気概を感じずにはいられません。
本書に漂う一種の解放感は現役の私たちから見ればこの上なく自由にも見えますし、あるいは話の展開の身勝手さに辟易する人もいるんじゃないかと想像してしまいました。本書をどう捉えるかも自由。いずれくるであろう自分の隠居生活を頭に描きながら筆者の世界に没頭するもよし。雑学を身につけたいという目的を持って読むのもよし。自分なりの筆者とのスタンスで楽しめると思います。
目的があり必要に迫られて覚えようとしたことより、興味本位で調べたことの方が案外覚えているもの。そういった知的好奇心をくすぐる内容が盛りだくさんの一冊です。
(辻田 浩志)
カテゴリ:エッセイ
タグ:隠居 好奇心
出版元:講談社
掲載日:2014-02-04