ATACK NET ブックレビュー
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からだことば
立川 昭二
読み終わってから筆者の経歴を読んで勘違いに気付いたのですが、筆者立川昭二氏は医師ではなく歴史家だそうです。しかも病気や医療についての文化史がご専門なんだそうです。それを見てようやく納得がいったのですが、本書の切り口は医学者のそれではなく、文化と身体の関わり合いが主体であるのですが、あまりにも医学的内容の多さにてっきり医師であると思っていました。
『からだことば』は日本における身体の部位を使った言葉から、日本人の心や文化をもう一度見直してみようという内容です。身体は単なる物ではなく、人の生活そのものでもある。そんな作者の根底の考えが伝わってくるようです。身体は生きるために必要な要素であることはいうまでもありませんが、人としての生活を送る上でのメンタリティーが言葉に託されたものが「からだことば」であると知りました。
読み進めるうちに、日本語の持つきめの細かい感性に出会います。「肌」と「皮膚」の使い分け、「手」と「足」に対する価値観、「みる」「きく」という感覚の分類と奥行きの深さなど、改めて日本語の「ツボ」が解き明かされていきます。普段何気なく使っている日本語に、これだけ日本人らしさが隠されているとは思いませんでした。全体から見渡したからだことばに対する考察にはうなるばかり。
ただ1つ気になったのは、現代の日本人が言葉の変化とともに「古き良き」日本人のメンタリティーを失いつつあるのではという危惧をされていますが、生活様式も文化も変化するのが当たり前で、百年や千年という単位で考えれば変わらないほうが不思議であると思います。自分が育った時代背景に懐かしさを持つのは悪いことではありませんが、よくも悪くも移り変わりは仕方のないもの。悪い面だけを見て判断するのもいかがなものかと思います。それもいずれ歴史が答えを出してくれるだろうと思います。
(辻田 浩志)
カテゴリ:身体
タグ:からだことば
出版元:早川書房
掲載日:2014-03-10