ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
ダイエットは運動1割、食事9割
森 拓郎
同タイトルの電子版から大幅加筆と修正を加えた改訂版として、紙での書籍発行となったものだ。彼の前作の電子書籍「お腹を凹ませたい? だったら腹筋運動なんかやめちまえ」同様、今回も「ダイエットは運動1割、食事9割」と運動指導者らしからぬタイトルに目を奪われるが、前作を読んでいる者としては期待感が非常に大きかった。
森氏本人は運動指導者にもかかわらず、折に触れて自分が運動嫌いであることを言っている。そんな性格ゆえに痩せようと奮起してフィットネスクラブに通いだした人や、成果が出ていない人に共通する勘違いやムダに目がいくようだ。医療従事者の私からみても、日本の医療費削減につながるくらい彼の指摘は正しいものに思え、またその言い分も至ってシンプルで、非常に受け入れやすいものなのだ。それが随所に見られる。
本書での読者に対する投げかけは「運動すればやせると思っていませんか?」というもの。
第1章では、「運動だけでは痩せられません」とし、痩せるためにする運動で無駄に食欲が増してしまう事実や、代謝を上げても体重は減らないこと、楽しく続けられない運動はストレスの元になるだけ、と今やっている努力にどれほどムダが多いかを説き、第2章では、そもそも太った原因はどんなことが生活であったのか、意外に一般の方が知らない、陥りやすい食の負のスパイラルについて、幅広い食事にまつわる知識とデータを用いて話を進めており、このあたりになるとかなり身近な話でどんどんと読むスピードがあがっていく。
そして3章ではその負のスパイラルから抜け出す食事の鍵となるものを栄養学の側面だけでなく、ライフスタイルも交えて紹介しているが、これが不思議と「私にもできるなぁ」という思いにさせられるものなのだ。
4章にして初めて運動指導者らしい記述が登場してくるが、あくまで、運動は増やすものではなく、そもそもの太る原因をやめることだと。また頑張る人ほどリバウンドもし、そのリバウンドでさえ実は考え方、メンタルに由来するものであると説いている。結局は、ダイエットとは痩せることでも食事制限をすることでもなく、継続的に続けていける食事との正しい付き合い方、食生活の改善こそがダイエット(食事療法)なのだと結論づけている。
本書が良書だと思われるのは、実際に運動指導をされている方たち、また私のように医療現場で日々患者さんに身体のことで相談される立場の者たちが、ダイエットを希望される方や健康になりたいと思っている方たちに対して日々伝えてきていること、伝えたい事実が無駄なくスリムにこの一冊にまとまっているところだ。実際、1時間にわたってこんこんと説明することや、毎回説明しても理解されないことが、「これ読んでおいて」と本書を手渡せば解決しそうなのだ。実際、この書評を書き始めた頃に増刷が決定したとのアナウンスがされていた。
(藤田 のぞみ)
カテゴリ:食
タグ:ダイエット 食事
出版元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
掲載日:2014-04-04