ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
体育会力
礒 繁雄
本書のタイトル・表紙や帯からは一般的な体育会で培われる能力に関するビジネス書のように思われるかもしれないが、早稲田大学競走部の礒監督による組織論である。著者が早稲田大学競走部の指導にあたってからの組織づくり、さらには今後変化していくであろう体育会の形について、惜しみなく書かれている。
冒頭で、「『体育会』は有機体に富んで、その中に生きる者たちによって常に少しずつ構成を変えていく有機体である」と述べているように、個々の選手の指導だけでなく、日本一の組織づくりに重きを置き、「個人」が育つ「組織」をつくるためのさまざまな取り組みが紹介されている。一般的な体育会のイメージである礼儀や上下関係などを徹底した上での著者の考えやプランニングが述べられており、心理学やバイオメカニクス的手法を用いた指導なども非常に面白い。途中、教え子であるディーン元気選手、ディーン選手の高校時代の恩師である大久保良正氏との対談や、高校時代の顧問である松本芳久氏の対談が盛り込まれており、著者の持論に至った経緯などが赤裸々に書かれている。
組織を強くするために体育会のノウハウが用いられることは多いが、個を強くする体育会のノウハウが書かれた本というのは非常に珍しいのではないだろうか。また上記のように本書は著者のオリジナルな考えがふんだんに盛り込まれており、読者が持論を構築していく上での大きな支えになるような一冊でもある。
(山下 大地)
カテゴリ:指導
タグ:陸上競技 組織
出版元:主婦の友
掲載日:2014-11-01