ATACK NET ブックレビュー
トレーニングやリハビリテーションなど、スポーツ医科学と関連した書評を掲載しています。
死の臨床格闘学
香山 リカ
この本を読むにあたり、著者について初めて知り得たことがある。それは香山リカという名前がペンネームであるということ。そして大のプロレスファンであるということだ。とりわけ全日本プロレス、ジャイアント馬場氏に思い入れが深いようだ。
それにしてもこの本をどう解釈すればいいのだろう。ジャンルとしてはおそらく現代思想か哲学の部類に入るのか。少なくとも我々が現場指導に生かせるような専門書ではない。自己流に解釈すれば、エンターテイメントでありながら激しく身体がぶつかり合う、危険と隣り合わせであるプロレスに焦点を当て、精神医学や現代思想の見地から死について多角的に考察したものと言えよう。ジャイアント馬場氏の死後、三沢光晴ら大多数の選手が全日本プロレスを離脱、新たにプロレスリング・ノアを設立した。著者はこの頃のキーパーソンであるプロレスラーたちを取り上げている。
正直に言えば、私はこれまで哲学書とは無縁であったので、おそらくこの種の読解力に乏しいことは前置きしておく。が、それにしてもこの本は難解だ。文献や著者自身のエピソードなどからの引用が非常に多く、何度も本筋から脱線してしまう。映画で言うなら途中で何度も回想シーンが入ってくるようなもので、これでは読者はストーリーにのめり込むことができない。それに彼女の文章スタイルなのだろうか、妙に着飾っていて難解な言葉を多用していることがより一層読みにくくしている。
結局何を言いたいのかわからないので、皆様にこの本の要旨をお伝えすることができないことをはなはだ申し訳なく思う。繰り返しになるが、この本を評価するにあたり、このジャンルに対する私自身の読解力不足を差し引いて欲しい。辛口批評となったが、逆にこの本がどんなものか興味を持っていただければ幸いである。
(水浜 雅浩)
カテゴリ:人生
タグ:プロレス
出版元:青土社
掲載日:2015-03-07