ATACK NET ブックレビュー
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評伝 デル・ボスケ スペイン代表、南アフリカW杯優勝の真実
ルーカ カイオーリ タカ 大丸
つい先日、サッカー日本代表監督に旧ユーゴ出身のハリルホジッチ氏が就任した。発表記者会見での日本サッカー協会幹部の発言によると、どうやら彼は完璧主義者らしいが。新監督と比較する上でこの本を読んでみると面白いかもしれない。
この本はスペイン代表監督であるビセンテ・デル・ボスケ氏の評伝である。彼はレアルマドリードひと筋で選手時代はMFとして活躍した。監督になってからはリーガ、チャンピオンズリーグなどで7回優勝。ついにはスペイン代表監督として2010年のW杯南アフリカ大会で母国スペインに初優勝をもたらした。その後FIFAの年間最優秀監督に選ばれるなど、誰からも名将として尊敬されている存在である。
この本は幼なじみから芸能界、政財界に至るまで、デル・ボスケ氏に関わりのある人物へのインタビュー集となっているが、指導者としての戦術やスタイルよりもむしろ彼の人物像、人間的魅力について数多く語られている。それだけ彼は人間的にも優れているのだろう。
デル・ボスケ氏を一言で評するならば、ずばり「謙虚」である。勝利を自分の手柄にせず、陰で支える存在に徹している。名将と言われるようになっても、彼は自分の立ち位置を冷静沈着に見極めているようだ。彼自身、あるスピーチの中で努力・自己犠牲・才能・自律・団結・謙虚さといった価値観を説いていた。これはかつて美徳と謳われた日本人の価値観と合致するのではないだろうか。
日本にサッカーが存在する限り、今後も色んな人物が日本代表監督を務めていくだろう。微かな望みを持ちつつも、今やスペインの英雄であるデル・ボスケ氏が、今後母国を出てどこかで監督を務める可能性は低いかもしれない。ならば彼のような日本人気質に近い人物が、いつか日本代表監督に現れることを期待してみたい。そうなればサムライ・ブルーはきっと面白いことになるだろう。
(水浜 雅浩)
カテゴリ:指導
タグ:サッカー
出版元:プレジデント社
掲載日:2015-04-22